★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

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魔がさした。

 

関係性を見直そうと提案するはずだった。

 

まぁ

毎度のことなのだが、

こういう話になると、長い時間をかけて

怒濤の反撃を喰らう。

浮き沈みしながら語りに語る彼が

いちばん最後に必ず言う台詞が

 

こんなふうにこんな時間まで長引かせて

明日起きられなかったら

どう責任を取ってくれるの?

不安にさせてさせたまんま、明日のことなんか

知るか?

 

だ。

 

そこまで散々言われ放題な上に

すこしでも反論しようとすれば

ものすごい剣幕で口撃された挙句のトドメなのだから

もはや粉砕骨折の様相である。

朝まで眠らず起こすと約束するも

起こしたところで

代わりに出勤出来るわけでもないくせに

責任取らなくていいって楽でいいよね、と

皮肉を言われるだけだ。

 

彼曰く

年上だから仕方ないのだそうだ。

わたしが年上だから。

何を言われようが

与えて与えて譲って折れて曲げて

それが年下の男を得た女の正しい在り方なのらしい。

年下が年長者と共に暮らすというだけで

もはやそれは特別な気持ちの表明になるわけで、

受ける年上は、

年増オンナと共にいてくれる年下に

感謝こそすれ何ひとつ文句を吐いてはならないのだそうな。

 

捻り潰してやりたいくらいに

腹ただしく、その憎悪の感情を

コントロールしながら対峙するも

乱れては

さらに敵の攻撃箇所を露呈して

血みどろになる有様。

 

求めても求めても得られないからこその

攻撃なのだ、とわかってはいても

やはり痛いものは痛い。

苦痛に顔を歪めれば

そんなのを苦痛だとほざくな、こっちの傷口を見てみろ!と損傷披露が始まる。

 

四方八方塞いでからの

火炎噴射は彼の得意とするところだ。

 

 

どうしたいか?

そりゃ、もう

一目散に逃げ出したい。

 

年上だから全てを受け入れろ?

いやいやいや

だったら、そういう、きちんとした

年上さんを探してきてみなよ?

居るか?あなたのように

難しいオトコを安心させてくれる立派な年上さんが。

 

よくわかった。

わたしは彼のことが

好きで嫌いなのだ。

 

好きで好きで

大嫌いなのだ。

 

論破しては正解不正解を振り分け

反論にさらに反論を投げつけては撃ち落とし

いかに

わたしが愚かで間違えているか、ばかりを

突きつけてくる彼が大嫌いなのだ。

 

悪夢のようだ。

大嫌いなのに

すこしの、好きに囚われてもはや逃げ出すこともできない。

 

 

 

吐きそうだ