★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと26

昨日のこと。

ハンドメイド新作をメルカリに出品しようと、

出品確定送信したら、同じタイミングで彼の携帯に通知音が鳴った。

 

ん?。。もしや、と確認してみると

わたしのフォロワーに登録してるようで、

出品するたびに彼に通知がいくようなってたらしい。

そうとは知らず。。

先月密かに買ったピアスに飽きて

売りさばこうとした事もバレバレというワケか。

 

彼の名義のわたしの携帯。

追跡システムとか入ってたりして。

 

だとしても彼の想像をこえるような場所に行くことはないからなんら問題はないのだけど。

 

今日から彼は夜のバイトの時間が2倍になる。

19時前には出て行く。

 

いってきます、もなく、すーっと出て行った。

そういえば前は、毎度カエルコールならぬ

カエルラインしてくれてたな。

いまとなっては不思議な感覚。

 

おはようも

おやすみも

いってきますも

おかえりもない

 

彼にはそんな言葉なんか要らないのだろうとおもう。

 

それでもなんとなしに、つい

おかえり。

いってらっしゃい。

ちいさく声をかけてしまうのだが

 

かえってくるのは

はぃ。という気のない返事。

 

夕飯を各自で食べ

各自で洗い

彼はわたしよりたくさん働き

帰ったら洗濯をする。

洗濯物を取り込むのも畳むのも彼。

いつしか、ゴミを出すのも彼の役目。

 

わたしが、したくないのではない。

以前はすべてわたしの役目だったのだから。

あるときの話し合いで

わたしがあなた以外にも大事にしたい人や

場所がある、と告げたことで

 

わたしがよそを向くなら、

家事をしながら動いていたほうが気が休まるから僕がやるよ、となったのだ。

 

わからなくはない。

いま、ふたりきりで会話も少ない暮らしをしていると、

家事をしなくていいわたしは、手持ち無沙汰でかなり落ち着かない。

彼が洗濯をしている間は本を読んだり

携帯を触ったり、仕事の残りをしたり。

かましいやつ、でいるほかないのだ。

 

バイトの時間を増やしたのも、彼はきっと不安だからだ。

ぼんやりしていたって、わたしはアテにはならないし、いつ、急に助けてほしいと言われるかわからないから貯蓄はいくらあっても足らないと考えているのだろう。

彼が思うほどに、これまでおんぶに抱っこだったわけではない。

急な出費を助けてもらったことはあるが

そのぶん、まとまった臨時収入があれば

都度渡してきたし、割合を考慮してもらったとしても、彼がこの暮らしに必要だ、と決めた額は給与からきちんと渡している。

わたしにだって意地はある。 

自分ばかり負担が多いという彼に、

この先、何があっても助けてほしいと言うつもりなど毛頭ない。

 

いまの暮らしを維持するために

2人して昼も夜も働かねばならないのか、といえば、否だろう。

だけれど片方だけが夜昼働くのだ。

ひとりのんびり家にいる、というのが

とてもいけないことのように思えてくる。

 

彼のこういうやり方は好きではない。

自分が動いて動いて

相手にプレッシャーを与える。

 

圧を受けて?どうしたの?

圧を受けて夜も働いた、というのなら

文句は言えるけど

圧を受けて何もしないのなら、受けたことにはならないよね

 

彼はそう言うと想像する。

 

だから

挨拶がないことも

わたしの居心地が悪いことも

夜中のビールを開ける音が怖いことも

彼に向かっては言わない。

 

文句なんか有ろう筈がない。

わたしのために、と、働く彼なのだから。

 

わたしが望むと望まざるとにかかわらず

わたしのために、と彼は考えているのだから。

 

わたしの望みは

いちにちのおわりに

いっしょのベッドにくるまって

抱き合いながら眠ること、それなのだけれど。