★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

大好きにはなれないだろう同僚の話

簡単に言うと

たぶん合わないのだ。

 

楽しい会話は成立するし、

助け合って仕事を進めることもある。

 

悪いヒトだとは思わない。

単なる相性なのだろう。

 

彼女はケチだ。

 

私の思うケチは

たんにお金を出し渋る、という事ではない。

無償で得られるものは要不要に関わらず

欲し、得た、ということに心を満たすのに、

自らが差し出すことは厭うという

心根のことだ。

 

 

自身に対する投資は惜しまないのだが、

他者に対すると、とたんにシビアになる。

 

たとえば

ひとつ契約が成立したとする。

誰もが、今後を考えて、お礼の品を持参するのだが

彼女はそこをケチる。

 

幾度も足を運び、頭を下げ、ようやく商談がまとまる、というプロセスを踏めば

自然に感謝の気持ちが高まり、

それらを先方に伝えたいと思えば

金銭を惜しむ場面ではないだろう、とわたしは考える。

 

ケチりました!と

わかってしまうような物品のチョイスは

側で見ていて目を覆いたくなる。

 

「だって、これっぽっちの計上しかとれない契約しかしてくれなかったから」

という言い分。

 

計上が小さかろうがそうでなかろうが

契約は契約だ。

計上はあくまでこちらサイドの都合。

ありがとうございます、になんの違いがあるというのか。

 

彼女のケチっぷりは随所で見られる。

社内の施策で一定成績を収めた者にだけ

与えられる物品や食事会への招待など

残念ながら仕事への労力すらケチる彼女が付与を受けることは稀。

都度恨めしそうに、隣席に置かれた物品や

招待チケットをみつめては

憤怒の表情を隠せないでいる。

 

あまりにあからさまな態度に

辟易するし、そんなに欲しいのなら、と

時折おすそ分けするのだが、

彼女から逆に差し出されることは皆無。

 

自身の成績が奮わない時に

他人が成績を入れてくるたびに

表情を硬くしては悔しがる。

 

特に同期に対するジェラシーがひどく、

同期が絶好調の折には

自分の知らない間に契約をしに行った、と立腹し、

ノルマ達成翌日に休暇を入れた!とまた

腹を立てる。

 

そんな様子をずっと傍目で見てきたため、

時にやんわり諭し、

腐りそうになると、新規開拓に誘い出し、

わたしが成績を入れる見込みが出来たら

経緯から成約までを細かに相談し

うまく付き合えるようやっているのだが、

 

報告の有無に関わらず、やはり他人の成績は

妬みの材料にしかならないようで

都度、腐る様を見せつけられては

やりにくいことこの上ない。

 

悔しいという勝気さがあるなら

駆けずり回って自身も成果を上げてくれば

良いだけの話なのだが、

自分に、この仕事は向いていないとボヤくばかり。

 

わたしの苦手な事務処理を得意とする彼女は

ケチだけれどマメ。

そのマメさに救われることも多々ある。

嫌いにはなりきれず

不振のさなか、激励の意味も込めて

彼女の誕生日に、ランチに招待した。

 

すこし奮発してフレンチでお祝い。

笑顔を振りまき喜んでくれる彼女に

企画してよかった、と思った。

 

その直後

わたしが不振に陥り、腐らないよう懸命に自身を叱咤激励するなか

ノルマを果たした彼女が鼻歌まじりで過ごし、

コロナで在宅勤務となり、

緊急宣言明けに業務が再開され

良縁があって、わたしの商談が立て続けに数件まとまって、

ちょうど自身の誕生日が来たこともあり、

そこに合わせて休暇を取った。

 

期待していなかった、といえば嘘になる。

彼女の誕生日にご馳走したランチは

わたしにしてみれば大盤振る舞い。

わたしが、勝手にしたことなのに見返りを求めるなんて、あさましい。。と自分を諌めては

みたが、

前日に、明日誕生日か、と呟く彼女に

あ、お返し、とか考えてくれてるのかな、と

思ってしまったのがいけなかった。

 

朝から夜までまったく連絡なく、

夜の10時くらいにおめでとうラインが来た。

 

彼や上司に祝ってもらい、しあわせな1日を過ごした後だった。

ありがとう、と素直に返事をして、

やっぱりケチだなぁ、と苦笑。

まぁわたしよりうんと年下だし、

もしか、家計的にしんどいタイミングだったのかな、と、深く考えないようにした。

 

それだけならまだよかったのだが。

後日

休暇に遠出してきた、という話や、

お客さんの誕プレを買いにいく、という話が

彼女の口から出てきた。

 

。。。あー。。

 

なるほど。

 

わたしは彼女にとってはその程度のポジションなのだと理解した。

甘えて良い人、というふうに捉えている、とも

解釈できるが、

要は礼を尽くすだけの価値があるかないか、で

否、との判断なのだろう。

 

加えて

数日前、彼女が数件契約を取り付けてきた。

喘いでいたことを知っていたから

祝福の声をかけたのだが、

その経緯は依然不明。

お互いに報告し合う義務などもちろんまったくない。

だが、その

しれーっと水面下で動いて成果を上司だけに報告するというやり方を嫌い同期に憤慨していた彼女が

自分の時にはそうするのだ、と知って

これまでの気遣いが馬鹿みたいに思えてしまった。

 

 

もうわたしの中で彼女のひととなりは

完結してしまった。

 

この先はやはり、自分の思う通りの関係性を保っていようとおもう。

 

職場なのだし。

友達作りの会ではないのだし。

仕事をしに行っているのだし。

 

 

 

82

約ひとつきぶりの呟き。

 

外は大雨。

 

あれから

少しずつ会話が成立するようになり

いつしか笑顔を向け合えるようになり

わたし達は、大きな山をこえたようだ。

 

とはいえ、流れを強引に戻したのは

純粋な想いばかりではなく、

少々の打算もある。

 

秋にわたしの車が車検を迎える。

修理費用がかなり嵩むとみている。

以前に彼に提案されていたプランは

彼の車のローン完済時に

私の車を売り、彼が新車を購入して

いまの彼の車を譲り受けるというもの。

 

有難い提案なのだが、

新車購入を羨ましく思い、

わたしが、そのままを口にしたことが

彼の琴線に触れてしまい

そのプランは保留になったまま

無言大会に突入してしまっていた。

 

片田舎で車の無い生活は

仕事が出来なくなるという意味を持つ。

新たに車のローンを組む程の甲斐性が

自分にない以上、

半年先の自分を救うべく

早めに手を打つことを考えたわたしは

彼との関係が良い感じになったタイミングを

逃すわけにはいかなかった。

 

一旦は自ら台無しにしたプラン。

彼から提案されたとおりに、とはさすがに

かましいだろうと思い、

彼の今の車の残りのローンを支払うことで

譲ってはもらえないか、と頼んでみた。

 

私の車の売却益と、夏のボーナスを差し出せば

足りる額である。

 

刹那主義のちゃらんぽらんなわたしが、

きちんと少し先の未来を考え始めたことを

評価してくれたのかどうか、

すぐさま彼は次の車の購入に動いてくれた。

 

その週の半ばには、懇意にする販売先から

パンフを取り寄せ、

その週のうちに見積もり書が届き、

8月中には納車の運びとなった。

 

新車はコンパクトカー。

今の彼の車は軽。

ハナコの田舎に帰る、とか、

遠出用には軽ではつらいでしょ。」

という理由から、軽より大きめを選んでくれたのだ。

 

 

彼が選んだコンパクトカーも

彼から譲り受ける軽自動車も

正直なところ、好みではない。

 

贅沢は言えない。

好きなものだけに取り囲まれて

生きてゆけるほどの

わたしではないのだ。

 

その日暮らしをしてきたわたしが

半年先を見据えるようになってきた。

芳しいことなのだろう。

 

このひとつき、彼は優しくなった。

けれど

彼の中に根差してしまった、

ハナコたるヒト、は

消えないらしい。

 

彼はわたしを好いてくれているのはわかる。

ただ

わたしのことを信用は

していない。

ふざけながらの会話の端々にそれは顕れる。

笑って応じながらも

わずかに気持ちがササクレそうにはなる。

 

以前と変わったことは他にもある。

わたしの為に彼が何かを差し出す、という

事が皆無になった。

食費はもちろん、雑費も個別会計。

 

わたしが彼のビールをついで買いすることはあっても

彼がわたしの口にするものを買ってくることはない。

平日の夕飯は共にするようになったが

食材はわたしが調達する。

 

彼がそれに関して何も言わず

折半にしようとしないところをみると

たぶん、家計のトータルバランスとしては

夕食分くらいはわたしが提供して、ちょうど良いくらいなのだろう。

 

願いは

半分くらい叶えば

充分なのだと

折り合いをつけて

進んでゆこうか。

 

わたしは賢くなったのかもしれない。

 

 

81

いつのまにか

まぁ、勝手にやってる事だけれど

夕飯係になっている。

 

金曜は何を食べるかと尋ねたら

買い置きのカップ麺もあるし、特には、と言われたため、作ることなくおえた。

木曜に、彼が箱買いしてきたカップ麺はまだ10個ほどある。

 

別に何を食べてくれようがかまわないのだけど

ほおっておくと平気で毎日毎食カップ麺を食べるのが

目に見えている。なんとなく嫌だ。

 

土曜の夕飯は冷蔵庫の余り食材を見て

焼うどんにしてみた。

わたしにしては、濃すぎず、適度な味付けで完成したようにおもう。

 

今日は、昨日安く買えた黄色と緑のズッキーニを使いたいと考え、追加購入食材を出来るだけ抑えるメニューということで。。

ひさびさにナシゴレンを。

 

冷凍してあったササミとズッキーニ、ナシゴレンにのせる目玉焼き、白菜のスープ。

不味いも、美味いも言わないヒトに差し出すとなると、レシピに忠実に作るに限る、ということで、らしくない計量をしながらの調理。

なかなか上手くできたと、自身は満足だ。

 

磯臭さが苦手な彼にナンプラーの匂いは大丈夫なのか、いつも気になるが、

大丈夫、と言ってたよね、と頭の中だけで念押し。

変わらず黙々と食べる彼に

ナシゴレンだよ、と教えてあげた。

ナシゴレン。。と返事があった。

 

記憶喪失者か、あるいは、秘境の地でヒトならぬものに育てられた野生児みたいな

反応に、すこし笑いそうになるも堪える。

 

というのも

今日買い物に出かけ、帰宅して

返事を期待しないままに、ただいまぁ、と

声をかけたら

 

お、、はい。

と返事があった。

 

おぃ。。いま。。おかえり、って言いかけたよね?ひっこめたよね?

知らんぷりしといたけど

その気のない、はい、は、あえてチョイスしてるわけだ。

なんのことはない、ヤツは、拗ねて意固地を押し通そうとしているのだ。

 

そうとなれば容易い。

 

夕食の後、いつもなら自室で読書のわたし。

隣室で彼が仮眠を取り始めたタイミングで

急ぎ毛布持参にて部屋を移動。

 

ベッドかとおもいきや

ソファで寝支度のヤツの頭上から

寝るときはもれなく潜り込むよ、と宣言したところ、

4ヶ月ぶりの笑顔をみた。

 

ただ、まぁ。。

油断大敵。安心してはいけない。

ここはスローにスローにいかなくてはならない。

 

眠れそうになかったこともあって

つけたテレビ。

横目で確認してみたら、彼も手にしたスマホから顔を上げ、画面に目を向けている。

ただ、何も口にしない。

 

どうやら、わたしの振る話に、1ターン以上の返事をすることや

時間や娯楽を共有することは

これまでの流れの中で、彼的にはNoらしい。

 

近寄りすぎれば求めたくなる。

求めないための距離感を破らない。

そういうことなのだろう。

 

めんどくさいヤツだ。

 

元通りは求めない。

わたしも欲は張らない。

そうしたらいまより寂しくなく

自分らしくいられるのかも。

 

 

80

金曜の夜。

自粛在宅勤務最終日とはいえ、

通常時と変わらず、休日前夜のゆるみが

気持ちを楽にさせる。

 

夕方から、だらだらと過ごし

惣菜の春巻きや、卵豆腐で空腹を満たして

ベッドで読書にいそしむ。

連日漫画5冊にハードカバー2冊。

なかなかの読書量だが、別に活字中毒になっているわけでも、愉しんでいるわけでもない。

起きている時間の潰しだ。

眠くなれば潰す必要もないのだが、

10時間以上も熟睡できる仕様にはなっていない。残念なことだけれど。

 

ひとりきりで空き時間を埋めるということは

そうしたくない時でも、そうすることで

そうしたい時にも、そう出来るということだ。

つまりは

自分の意思で、ひとりきりの時間を満喫する権利を得ているということ。

さみしいときだけ、かまってよ、とは

言えない。

彼はわたしのモノではないのだから。

 

読書以外に、手芸なり、なんなり、わたしが出来ることはたくさんある。

ただ、いま、創作意欲というものが

著しく欠乏しているだけの話。

時期が来れば、ひたすらにチクチクと縫い物をしたりするのだろう。

 

わずかな時間も、さみしさを感じずに

没頭できるであろうことなら、ほかにもある。

ただし、それらをするにはゆとりある収入を得る必要がある。

 

要はいま、読書くらいしか

潰せるアイテムがないのだ。

 

ラインを飛ばせば話し相手になってくれそうな人はわずかながら居る。

けれど、もはやゲーマーとなった彼を隣室に置いて

筒抜けでどんな会話が出来るというのだろう。

 

月曜から

非日常がゆるゆると日常に移行してゆく。

そうなれば、わたしには彼以外に触れ合う人や、仕事がある。

この、なんともうすら寂しい状況をすこしは

稀釈することができるだろう。

 

 

逃げちゃえば?

 

ささやく声が

すこしはちいさくなるだろう。

 

なくなりはしないだろけれど。

 

 

79

愚痴ばかりじゃないか、とおもう。

 

こんな記事を1から読んだら

わたしなら苛々するだろう。

飽きることなく悩み続け、気持ちを落とし、

自信を喪失してゆく経緯の記録でしかない。

 

たるを知れ、か。

 

屋根があり、暑さ寒さを凌げる外壁があり、

柔らかい寝床がある。

当たり前に水があり、清潔なトイレや風呂もある。

明日の食料がないわけでもない。

車を持ち、衣服や、趣味にお金をかけることもできる。

国が違えばセレブな暮らしともいえる。

 

心をぴたりと閉じた彼との暮らしは

独り暮らしよりはたぶんマシ。

生まれ落ちた故郷に帰って暮らすことに比べれば

もちろん今の方が格段にイイ。

 

同郷の元夫や、わたしの親類縁者が

ウヨウヨ居るあの場所に移住したら

わたしは犯罪者なのだ。

罪名は離婚。

今は治外法権によって安穏としているわけで

ひとたびあの地に足を踏み込めば

罪人に値する暮らしが待っている。

 

それをおもえば、ここはまだ自由のきく優しい世界だ。

なのに、さらに優しくされたいと

求めることがよくないのだろう。

 

 

わかっちゃいる。

理屈で考えれば。

 

 

理屈通りに動ける人間ばかりなら

世の中はすべてがうまくゆく。

 

自分のことが、

たんなる邪魔な荷物のように感じてしまうこの

靄がひとりでに晴れることはない。

かといって唯一の他力である彼に期待できない。

 

逃げちゃだめだ、は、正しくて正しくて

嘘くさい。

 

逃げちゃえば?

だってどう転んでも

きっと悔やむんだし。

どうせ悔やむなら楽になりなよ。

 

だよね。

 

だよね。

 

 

78

朝から自身の仕事の顧客宅へ。

20分ほど事務的な話をして

そのまま彼の職場へ向かう。

今日は商品の買い付けを頼まれていたのだ。

月に数回この買い付けに向かう。

彼の職場から車で5分とかからない場所なのだが、彼は職場を無人には出来ないため

この簡単な買い付けにすら行けないというのが、わたしの存在理由でもあるわけだ。

 

わたし自身の仕事との兼ね合いもあるため、

時期によっては短時間で済むとはいえ、煩わしい依頼でもある。なにより買い付け資金を預かって往来するのは気分が良いことではない。

そんな気分を知ってか知らずか、この依頼だけは絶対であり、彼が前日わたしを罵倒しようが、叩きまくろうが、事前に先方に買い付け約束をしている以上、行くと決まっていたら行く。

この依頼を受けるということは、

職場で役に立たなくとも、貢献度で言えば、なかなかの度合いの筈なのだが、

労いの言葉でも求めようものなら

火炎噴射とバズーカ砲を1度にくらいそうだから、当然ヅラで引き受け続けてきた。

 

そんなわけで、昨日、この買い付け時間について確認していたら、

「ついでに車のオイル交換もしてきてもらおうかな」と、彼が言う。

ずいぶんさらりと言ってくれるものだが、

なぜ、それをついでに頼めるのかわたしには

わからない。

オイル交換は帰宅途中に立ち寄れば

ほんの30分で終わる。

混雑というものが皆無な、この田舎町では

予約しなくてもそのくらいで終わる。

しかも、昨日今日と彼はアフター5フリーである。

さらに加えると、わたしの車のオイル交換をしなくてはと思い、時間がどこで取れそうか、と

考えていた矢先のことである。

自分のを後回しにして彼のを済ませてきた。

 

こういうことは多々ある。

頼まれて事が

灯油だったり、ビールだったり、どれもこれも

不可解なタイミングなのだ。

夜、わたしが在宅。彼がバイトに向かう前に

ビールを頼まれた時には、わずかに眉が動いてしまった。

着替えてビールを買いに行けと?

帰り道にコンビニなりスーパーなりに

立ち寄れば買えるじゃないか。

 

彼のそういったわたしに対する扱いは

関白な亭主のようであり

甘えたな子どものようであり

いずれにせよ、わたしをイラつかせてきた。

 

なにかをさせることによって

自分が相手にしてあげていることから

引き算して、バランスを取るような、そういうけち臭さが嫌なのだ。

 

自分の方が

経済、精神面の負担が大きい、と彼自身が感じるのは勝手だが、

感じだから事実そうなのだ、と決めつけるのは

いかがなものか。

 

あー

だめだ。

 

 

どこを掬い取れば

嫌いにならないでいられるのだろう。

 

5月の終わりにしてすでに

帰宅同時に冷房を入れ、部屋を冷やし

寒さに毛布に包まりながら

飲めないアルコールを少し口にした。

 

 

こんな暮らしは嫌だと口にしたら

得意満面で彼は語り始めるだろう。

わたしが起因であり、これは起因から生じた結果にすぎないと。

教えてあげたい。

その結果も、ヒトをすげ替えれば

違うパターンがあり、

単にあなただからこうなっているのだと。

 

 

 

 

 

77

シンジじゃあるまいし。。とか

自分にツッコミ入れながらも

逃げちゃダメだ!を合言葉に午後から

彼の職場に。

 

数件業務をこなし、ちょっとは慣れてきたかな、と思った矢先

いつもの処理の複合バージョンがやってきた。

とたんにアタマが真っ白に。

開始と終了時にワンクリック追加して、

既に覚えたバージョンを1つずつこなせば終わる内容だったのだ、と後で知ることになるのだが、

顧客の面前でフリーズしたわたしに

不機嫌に小さく低い声で、代わるからっ!と

告げて席を奪う彼。

所在無く立ち竦むようにして彼の処理を背後から眺める。

対応が終わった後、何をどう処理したのか

アタマを回すわたしに彼が

「普通にやるだけ。目新しいことをやるんじゃない。分けてやることもできるけど、普通はしない。」と怒気を含んだ声で言い放ちながら睨みを利かせる。

 

動揺してはいけない。

コイツの悪態には辟易しているが、もう、職場で最高に嫌な奴、と分かりきっているのだから

いちいち振り回されるな。

冷静に冷静に一連の流れを頭で繰り返しながら

メモを取る。

近頃、悪態&叱咤のあと、必ずノートにメモを取るのだが、横に走り書きを足すことにしている。

ばかっ!うるせー。

やな言い方!感じ悪っ!きらいっ!

感情そのままを書いておく。

ちょっとした憂さ晴らしだ。

 

それでも、彼は職場では比較的穏やかで

日によっては、世間話程度の会話を振ってくることもある。

適度な相槌と、適温で対応する。

公私混同せず、自宅でのヤツが、わたしにとってどんなに

ツマラナイオトコに成り下がっていようが

職場では気を遣う上司なのだから仕方ない。

 

が。。

 

こちらから振った世間話を無言でスルーされたことにカチンときてしまい、

他の用事を理由にさっさと帰宅してきた。

 

ほらね、必要なだけじゃん、

情や想いなんかどこにもない、と気持ちが沈んだまま夕飯の支度にとりかかった。

 

今日はバイトが休みらしく夕方からふたりきり。

借りてきた漫画を読むことにした。

気晴らしになれば、と、読み進めていたら

あまりの面白さに、ぶっ!と吹き出しそうに

なる。

なんとか空咳で誤魔化し、

それでも漏れだしそうな笑い声を

布団に口をあてて堪える。

こんな状況で、ひとり爆笑してたらおマヌケすぎる。

 

どんなに凹んでいても、不安が山積みでも

面白いことがあったら爆笑しちゃうんだなぁ、自分。

 

たぶん、わたしも

必要なだけなんだろな。彼のこと。

楽しかったときもあったのにな。

 

わたしの話にまったく関心のない彼のこと

好きだとか思えないし。

 

夫婦でもないのに

晩年夫婦然なんか

やだし。