77
シンジじゃあるまいし。。とか
自分にツッコミ入れながらも
逃げちゃダメだ!を合言葉に午後から
彼の職場に。
数件業務をこなし、ちょっとは慣れてきたかな、と思った矢先
いつもの処理の複合バージョンがやってきた。
とたんにアタマが真っ白に。
開始と終了時にワンクリック追加して、
既に覚えたバージョンを1つずつこなせば終わる内容だったのだ、と後で知ることになるのだが、
顧客の面前でフリーズしたわたしに
不機嫌に小さく低い声で、代わるからっ!と
告げて席を奪う彼。
所在無く立ち竦むようにして彼の処理を背後から眺める。
対応が終わった後、何をどう処理したのか
アタマを回すわたしに彼が
「普通にやるだけ。目新しいことをやるんじゃない。分けてやることもできるけど、普通はしない。」と怒気を含んだ声で言い放ちながら睨みを利かせる。
動揺してはいけない。
コイツの悪態には辟易しているが、もう、職場で最高に嫌な奴、と分かりきっているのだから
いちいち振り回されるな。
冷静に冷静に一連の流れを頭で繰り返しながら
メモを取る。
近頃、悪態&叱咤のあと、必ずノートにメモを取るのだが、横に走り書きを足すことにしている。
ばかっ!うるせー。
やな言い方!感じ悪っ!きらいっ!
感情そのままを書いておく。
ちょっとした憂さ晴らしだ。
それでも、彼は職場では比較的穏やかで
日によっては、世間話程度の会話を振ってくることもある。
適度な相槌と、適温で対応する。
公私混同せず、自宅でのヤツが、わたしにとってどんなに
ツマラナイオトコに成り下がっていようが
職場では気を遣う上司なのだから仕方ない。
が。。
こちらから振った世間話を無言でスルーされたことにカチンときてしまい、
他の用事を理由にさっさと帰宅してきた。
ほらね、必要なだけじゃん、
情や想いなんかどこにもない、と気持ちが沈んだまま夕飯の支度にとりかかった。
今日はバイトが休みらしく夕方からふたりきり。
借りてきた漫画を読むことにした。
気晴らしになれば、と、読み進めていたら
あまりの面白さに、ぶっ!と吹き出しそうに
なる。
なんとか空咳で誤魔化し、
それでも漏れだしそうな笑い声を
布団に口をあてて堪える。
こんな状況で、ひとり爆笑してたらおマヌケすぎる。
どんなに凹んでいても、不安が山積みでも
面白いことがあったら爆笑しちゃうんだなぁ、自分。
たぶん、わたしも
必要なだけなんだろな。彼のこと。
楽しかったときもあったのにな。
わたしの話にまったく関心のない彼のこと
好きだとか思えないし。
夫婦でもないのに
晩年夫婦然なんか
やだし。