★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと49

ゆうべ

ギリギリと歯ぎしりをしながら

ソファで眠る彼にむかって

そろそろいっしょに眠りませんか、と声をかけた。

 

むろん返事はなく、歯ぎしりは続く。

 

無理やりソファに潜り込んで、

彼のお腹に背をつけて眠ろうとするも

目が冴えて眠れない。

 

そうこうしているうちに

眠りのなかにいる彼の手が、わたしの部屋着の

中をまさぐりはじめた。

 

ん?。。無意識か。

されるがままになっていたら、いきなり目覚めたかのような勢いで行為が始まった。

身を合わせたのは半年ぶりか、もっと前か。

 

事を終えて身を横たえたままのわたしを

そのままにして、彼は再びビールを冷蔵庫に取りにいき、つまみを用意して、ソファの端に座って携帯で映画を見始めた。

 

彼が座る方へと伸びたわたしの足先を

合間に触ってさすったり、毛布をかけたりする。

兆しなのかな、と、すこし柔らかな気持ちになって眠りに落ちた。

 

朝になったら全てが元どおり、とはゆかず

ゆうべのあれは、酔った勢いで

彼のなかの男性が一瞬目覚めたものだったのか、と、残念なような、納得したような。

そういえば、彼の過去話で聞いたことがある。

前妻との間に子をもうけたときの話。

 

ふたりとも酔っていてね、そうなってしまって。

 

前妻の話はよく聞いてきたのだが、

彼を知ろうとせず、知らないままに

見当違いの指摘や非難ばかりする上に、

自分は良し、貴方は駄目、を柱にして

虐げられていた、という。

それでも所帯を持ち、共に暮らした仲ならば

いっときにせよ愛おしいと感じあった時が

あったでしょう?と問いかけても

始まりからそういう関係ではなかったのだ、と

彼は否定する。

 

子を成すということは

裸になり、究極の接近をするという事だが、

感情が背いても出来ない事ではないとは思う。

けれど、それはつまり

生理的に受け付けないほどには嫌悪感のない相手だと言うことだ。

行為があるときは、いつも飲んでいた。

飲んでからでなくては出来なかった、とも聞いた。

加えて、素面でそういうことが出来たのは

わたしが初めてだ、とも。

 

深く考えるほどのことではないのだろう。

酔った彼は

なんとなくオトコになり

少しの間だけ、以前のふたりに戻ったような

時間を過ごした。

前妻や元カノらと同じように

飲んでならば身を寄せられるようになった

わたし。

 

ね。

ここでわたしが呟き続けていることくらい

貴方なら知っているのでしょう?

真横で素知らぬ顔でゲームをしているけれど

とっくにこのブログの存在に気づいているのでしょう?

独りよがりな馬鹿な呟きばかりしているな、と

呆れているのでしょう?

 

分かり合えなくても

笑いながら話せなくても 

かまわない

 

いちにちのおわりに

いっしょにくるまって眠れたら

そのほかのことなんて

いまのわたしはどうだってよいのです。

 

貴方はそうではないのだろうけれど。