★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと53

話はいいです

 

そう、返信がきて、なんというか

折れそうな気持ちが、ポキっとは折れず

折れる筈のそのポキっ、の本体そのものが

形状を変え、曲がったまんまになったような。

ポッキーがグミに変わった、という感じ。

 

相手の気持ちが読めないときに

自身と同じではないかと想像してしまうのは

わたしの良くない癖で、

自分と同じかも、と思い込んで

悲観したり楽観したりする。

 

わたしが好きな彼は、もはや過去の人で

この先は現れないのかもしれない。

愛おしげにこちらをみつめる眼差しや

たいせつそうに身体を引き寄せるしぐさや

わたしにだけ語る心の声や

そういったものはすべて過去のわたしに対してだけ、彼がくれたもの。

 

では、彼の内情はさておき、

わたしはどう感じているのか、というと

やはりいまの彼を好きではない。

関心が無い、どころか、わたしという存在をないかのように扱い、振る舞う彼をみていると

自分が彼の人生の邪魔者でしかないように感じるからだ。

 

初期の頃の熱を持った彼の残像を

引っ張り出しては眺めて、しばし余韻に浸ったら

いま目の前にいる人はいったい誰なのか、と

喪失感に襲われてしまう。

 

それでもわずかな灯火を消してはならない気がして

彼の眠るソファに身を寄せに行けば

抗うことなく、彼の胸に背をあて眠ることを

許される。

だからなに、ってわけではない。

それができたから、彼が以前の彼に戻るわけでもなんでもない。

 

良い香りを立てて、自身の夕飯を作り、

ひとりで食べ、ゲームに興じる過ごし方が

変わるわけでも、わたしの存在を加味したような動きをするわけでもない。

 

これは愚痴なのだろうか。

単に起きていることの状況説明なのだが、

他人に語れば、愚痴や不満にしか聞こえないだろうと思う。

 

彼の前妻との別れの行程を

なぞっているのかもしれないと思う。

彼は自分がどうしたい、と、口にせず

前妻がしたい、という申し出に乗る形で

別離が成立した。

 

わたしの申し出待ちなのか。

 

わたしは彼のことがすきだ。

ただし、それは過去と現在を足して

総合的に考えた場合に、という前提付きで。

 

現在だけを抜き取り考えなければ

ここからは抜け出せないのかもしれない。

 

好きだったひと、のカテゴリに

彼を仕舞いきれずにいるわたしが悪い。