★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと34

昼間は春めいた陽気。

まだ朝夕肌寒くはある。

 

夕方からバイトに出る彼を見送ることに

なれてきたようなそうでもないような。

 

今日もふたりの会話はわずか。

昨日より少しだけ多い。

 

おふろ、入ってないのか?

 

ひさびさに彼発信の言葉。

 

シャワーを浴びようと脱衣していたら

パンツの前下部分にほつれ穴を発見し、

もうお暇をあげようと、そのまま捨てた。

帰宅した彼が洗濯機を回して干す段になって

わたしのパンツがないことに気づき

発したのが

おふろはいってないのか?だ。

 

書くと10文字くらいの言葉だが、

最近彼がわたしに向かって発した言葉のなかで

最大文字数だろう。

 

その、貴重な言葉に対してのわたしの言葉が

 

パンツ、穴開いちゃって捨てたんだ。

なんとも情けないセリフである。

 

パンツに穴が開かなかったら成立しなかった

会話。

 

前歯が1本抜けるくらいの事があれば、

その顔でにっこり笑いかけるくらいのことをすれば

 

さすがの

彼も笑うのだろうか。

 

声をたてて。