★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと52

なんとなく限界だ、とおもい

昼過ぎに家を出た。

 

ソファに横たわる彼に

いってきます、の声をかけることもせず

扉を閉めてでた。

2時間ほど徘徊したら帰るつもりだったのに

どうしたって帰る気になれず

 

おもいたって、遠出をするけれど

帰るから心配しないように、とラインで知らせる。

既読のまま返事が返らないことを確認し、

重ねて

帰ったらすこし話をしませんか、と

問いかけるてみる。

 

いまのこの現状を打破したいと思っていますか?という確認の意味を込めたのだが

ほどなくしてきた返事は

 

いまの時期に遠出はよくないのでは、

というもの。

件の流行病のことだろう。

人混みにはいきませんよ、と補足する。

 

ふたつめの返信は

 

話はよいです、と。

 

よいです、はつまりしなくていいです、ということなのだろう。

 

またしても前妻と彼のエピソードが頭を過る。

あるとき、前妻が夜、遊びに出かけた。

ほろ酔いで帰ってくるなり彼に常日頃の

うっぷんをぶつけ始めた。

彼は

好きなように遊んできておいて

自分の気がすむように動いておいてから

今度はこちらに矛先を向けて攻撃してくる、っておかしいでしょ、と憤慨した、というもの。

 

今日のわたしがしようとしたことも

彼から見れば同じ事なのだろう。

勝手にふらりと出かけ、自身の気持ちを整理できたら、話をしようよ、とはいかに、ってことか。

 

一応、確認のために、いまいちどラインを打つ。

 

話をしない、というのは

以降も、と受け止めてよいのですか?

 

もう一切、語り合って解決しようとはせず

現状維持でいこうと思っているのか、という

確認だ。

返事如何によっては本当に身の振り方を含めてひとりで考えなくてはならない。

 

彼からきた返事は

 

わかりません、というひとこと。

 

そうくるのか、気が抜ける。

ともかく

この先にわたしから、話をしませんかと

彼に問いかけることはもうできないし、しない。

 

今日

話ができたら

話そうよ、と彼が受けてくれたら

 

いまの状況に対する不満とか文句とか

そんなことを口にするつもりはなかった。

 

いっしょにくらしているのだから

思うことが多少あるとしたって

最低限の挨拶や

食事をできるだけいっしょにとることに

努めませんか、と言うつもりだった。

 

それから

できることならば

身震いするほどに嫌でないのなら

わたしはあなたと同じ場所で眠りたいのだと

そう願っているのだということを

伝えるつもりだった。

 

彼をこんなふうにしてしまったのがわたしなら

わたしをこんなに無口にしてしまったのは彼だ。

 

ラインの終わりは

ビールとカップ麺を買って帰ってください、というもの。

わたしが断るとは思ってもみないのだろう。

それが何故なのか、わたしにはわからない。

 

眠い。

 

ひどく疲れた。