★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

76

どーしよーかな。。

 

このまま何年も会話のない生活を

続けてゆくのだろーか。。

 

これっていわゆる「冷めた」という状態なのじゃないかと思うのだけど。

もちろん暮らしてはゆける。

彼が出て行けと言わない限りは。

 

なんとも心許ない状況。

身から出た錆だとすれば、錆の厚みがありすぎて身動きが取れない。

下手に下手に出ながら様子を見るよな自分が嫌。

 

らしくもなく、人生を諦めたくなってくる。

 

ご飯を作っても失敗続きでちっとも美味しくない。

薄い濃い、感想もないままに黙々食べる夕飯は

エネルギー摂取作業にすぎず

夜、自ら寝床に潜り込み、背後から抱きしめられても翌日話しかけられるわけでもない。

 

陽気に、ねぇねぇ、と語りかける気にもならない。

 

終わってんじゃん。。と思う。

 

いまならさよならを告げても

引き止められないのじゃないかと思うけれど

きっと、申し出たら

修羅場になるのだろう。

それでも仕方ないかなぁ、と思う反面、

仕事はどうする?住む場所は?車は?

難題が山積みだ。

 

車を手放してまた首都圏に戻るとなると

まとまった資金と、住処探し、職探し、

各種手続き、面倒くさいことが山ほど降ってくる。

 

生きてていいのだろーか。

わたしのような半端者が。

 

救われても救われても救われ甲斐のないような

生き方をしてきた。

悔やんだところでもはや手遅れ。

 

彼が常に上から目線で強気でいられるのは

ひとりで生きてきて、この先も

生活という面だけで言えば、ひとりで生きてゆけるからだ。

 

わたしはそうではない。

今の営業職も今回の感染騒動で、

当面の給与保障はあるものの、日常が戻ってきたら、成績を上げ続けなければ

解雇もありうるという厳しい世界。

正直、あと1年存続出来たら御の字くらいのところまで追い込まれている。 

 

その次の仕事のアテもない。

残念ながらこの田舎町で、今の給与が得られる職場はない。

ふたつみっつ掛け持ちでバイトするほかない。

そのバイト先すら見当たらない。

 

どんなときも

深刻になりすぎないのが長所だと思い、

ヘラヘラと笑いながら過ごしてきた。

彼のように生きることが正解だと知りつつも

それを避けてきた。

 

ここから先の半年が

このあとの自分の行く末を決めるターニングポイントになりそうだ。

 

つらいなぁ。

いきてくって。

 

わたしはキリギリスなのだろう。

 

 

 

 

 

75

小僧は変わらず小憎たらしいまま。

 

自粛も解け、非日常の温い2ヶ月が終わろうとしている。

感情の起伏グラフの波も穏やかになってきたせいか、小僧サイドの言い分を加味しながら考えるようになってきた。

 

彼氏という役回りの人には、無条件で庇護されるものだと勝手に思い込んできた事は

良くはなかったな、と。

 

ただ、なんというか

とどのつまり、わたしの理想の相手など

きっと地球上に存在しないのだ。

 

豪気で情にもろく、後先より、今が大事で

お人好しで、賢くて、ユニークで、器用で

なによりわたしの事が大事で

わたしの感情に常にアンテナを立て、

わたしが望むことを叶えようと必死になり

決してわたしにダメ出しなどせず

来る日も来る日も、熱い眼差しを向け、

決して尽くしている、とは思わず、本望だと心底思っている。。

彼がそんなコだと、期待してしまったのには

それなりの理由があるのだが、

まぁ、結果、そんなわけないじゃん、だった、という事で。

 

プライベートと仕事は別だ、と思う事にして

鼻息荒く彼の職場に出向き、

書類の処理の仕方についていくつか質問。

教えてくれるのは有り難いのだが、彼の回答に毎回こころがささくれ立つ。

たとえば

「印を押すのはココとココとココだよね?」と

わたしが問う。

望む回答は

エスかノーか、あるいは、「いや、ココだけだよ。」

なのだが、

彼はまず先に回答しない。

長い長い長い長い解説から始めるのだ。

その書類の辿り着く先があそこなのだから

ああで、こうで、たとえばこの書類ならば

ここがこうなっているからこうで云々。。

あまりに長いため、結局、どこに印を押すのか、の答えのインパクトが薄々になり、

答えてもらったのかどうかもわからないままに

質問タイムが終了してしまうのが常。

 

今日も一悶着。

処理済みの書類を所定の位置に分類しようと

デスクの引き出しをあけ、種類ごとにピンで止めてある書類に、処理したばかりの書類を重ねて止めようとしたときのこと。

ピンで止められていない書類が1枚だけ

重なって置いてあるものを、分類不可だと解釈して、脇に避けたとたんに

なぜ避けたのか!と、鋭い声が飛んできた。

ん?。。どう答えてよいかわからなくなり

沈黙していると

なぜ避けたのかと聞いているんだ!と

いやぁな圧をかけてくる。

 

。。なぜ?避けたか?。。

いや、なんらかの理由により、彼がピンで閉じずに避けてあるものだと解釈しただけなのだが。

てか。。そんなに目くじら立てるよなことか?

 

どうやらたまたまピンで閉じてはなかっただけで同種類の書類を重ねて置いていたものを

わたしが横に避けたことが不正解だ!と

激オコになっている様子。

 

しかも

「違う書類同士を混ぜてしまった、というミスならまだしも

同じ書類を違うものと認識するなんて

普通はしない。ありえない。」と言う。

 

。。。逆じゃね?

違う書類同士を混ぜ合わせるほうが致命的じゃないのだろーか。。

同じ種類の書類を弾いてしまったのなら、最終

束ねるだけで解決だけど

違う種類の書類に混ぜたら気づかなかったらアウトじゃん。。

 

ねちねちねちねち

同じことばかりぶつぶつ言いながら責めてくる。

 

だいぶん前から分かっているのだが

小僧は、教える、ということが下手くそだ。

猫や犬を躾けるときのやり方が有効だと信じて疑わない。

そうではない、と、いくら言っても耳を貸さない。

脅してビビらせれば出来るようになると思っている。 

 

職場の彼は

ただの嫌な上司だ。

いや

大嫌いだ。

 

74

むくむくと湧き上がる想いを

団扇で扇ぎたいと、思うと同時に

これまで彼に烙印された、「ハナコというひと」短編集をめくって蓋をしようとする自分。

 

素直な感情をあらわすとしたら

わたしはいま怒っているのだ。

 

火急にと求められて彼の元へ

裸でひとつで飛び出して駆けつけた。

 

そしたら

全身全霊を僕だけに捧げてくれるヒトではなかった、と言われ

ならば僕はお金を、ハナコは精神を、の

当初のバランスは崩れたのだ、とされ

働いても、彼より収入が劣るというだけで

経済的負荷をかしつづけているかのように言われ、

僕は与え続けている、ハナコはくれない、ばかり言われ続け

あげく、彼の仕事をいつまでたっても覚えようとしない事を酷い仕打ちのように責められ

なんなんだ!

 

平日休めない仕事を選んだのは誰だ!おまえだ!

 

ずっと首を傾げながらも聞いて納得しようとしてきた。

だけどやはり腑に落ちない。

 

まるで

都落ちしたいからと助けを求め、

手助けしてくれるなら、わたし、あなたの

仕事のパートナーになるわ、

ついでに他の仕事も2つ3つ同時にやって

あなたの支えどころか、あなたより稼いで

さらにあなたを愛で包み倒すわ。窒息するくらいにねっ、

8つも年上なのに、あつかまし

側においてもらうことができるなら

なんだってするわっ

なんだって言うことは聞くし、くちごたえなんか絶対にしないからっ

 

とか、平に平にお願いして始まった同棲生活を

わたしが反故にしたかのような責められ方。

 

いまさらいうか?

年上はね、

年下が側に居てくれる、というだけで

もうそこにはすごい価値があるんだよ

 

まてこら小僧。

 

おまえが欲しいのは彼女でもなきゃ妻でもない

かあちゃんだろ。

 

かあちゃんだから

小僧を置いて出かけたりしてはならないし

絶えず小僧がひとりだということを念頭に置かねばならず

仕事だろうが、付き合いだろうがオールNG。

拗ねたら構いにいって、よしよし

かあちゃんが悪かったねえ、と宥め

悪態暴言暴力にも対抗してはならず

思春期の少年を扱うようになすがまま、なされるがままにいなくてはならない。

 

気づいてしまってから

冷ややかな風が心を通り過ぎて行く。

 

母親を頓挫して駆けつけた先で

母親をやれ?

 

 

無理でしょ。

 

わたし、あなたをオトコだとおもって

いっしょになったのだし。

 

オトコじゃないなら無理でしょ。

 

こども、いらないもん。

 

73

2月以前の彼と、以後の彼は

バージョンが違うのだと思うと

しっくりくる。

 

旧バージョンは

きちんと目を見て話し、饒舌で、でも

わたしの芯のなかにある隠した部分を

見極めてやろうとする粘り気のある目を持ち、

わたしの不用意な発言を集めては眺め、

深い溜息をつきながら

畳んで胸ポケットに差し込むような、

そういう型式。

旧バージョン彼は、テレビや、わたしから聞いた噂話を酒の肴にしては、とり憑かれたように話し続けた。

それはわたしに語っているというよりも

自身の言葉を口に出すことで、確信に変えてゆく作業のようなもの。

だから、意見や感想を求めていない。

彼は気づいていなかったのだろうけれど

ずっとわたし達は語り合ってはこなかった。

語り手と聞き手をしていただけなのだ。

読みたい本があっても、検索したいワードがあっても、ご飯を食べるにはまだお腹が減っていなくても、

彼の様子を見ては、本を閉じ、スマホを伏せ、

ご飯の支度に取り掛かり、

おかしいな、こんな筈ではなかったのに、と

時折ちいさく気持ちが堕ちていった。

 

今のバージョンになってからというもの

極端に自分の時間が出来た。

バージョンアップだ。

しかも、赤ちゃんがある日を境に中学生になったような段階越えの。

新機能を試すように

少々戸惑いながらも、数時間ひとりで

出かけてみたり、彼を視界から外して、読まねば死ぬのか、というほどに本を借りては返しを繰り返してみたりしたのだが、

旧バージョンからの移行は改善点ばかりのようにみえて、その実、わたしは圧を感じるようになった。

わたしは、圧からすこしでも逃れようと、

頼まれてもいないのに

夜のバイト前に眠る彼より時間的猶予があるのだから、と勝手に夕飯を差し出すようになった。

美味しいも不味いもなく餌のように食べる彼を

いやだな、とも、ムカつくな、でもなく

食事って無心無言で食べた方が消化に良さそうな気がする、とさえ思うようになってきた。

さみしくないか、といえば、やはりさみしい。

けれど

欲しがるほどには愛情を与えられなかった赤ん坊が、成長したならこうなるのもやむなしか、とも思う。

わたしは、無償で赤ちゃん彼を抱きしめて安心をあげられなかった。

怖くない場所だよ、と教えてあげられなかった。

むずがる赤ちゃん彼に手を焼いて

自分が赤ちゃん彼の犠牲になっているんだ、

こんなにしんどいのに、どうして悪い母親だと

泣き喚いて責めてくるんだ!と抗議し続けた。

 

時の流れが彼を新バージョンにしたのだから

旧バージョンに戻ることはない。

何度やり直したところで

彼は新バージョンへと移行するだろう。

 

夜泣きせず、穏やかに微笑み、オムツは自分で替えて、吐かずに上手にミルクを飲み、

抱きしめたいときにおとなしく抱かれ

同じタイミングで眠る

そんな赤ちゃんが良かった、と、望んだということらしい。

 

次のバージョンで彼は

高校生になるのだろうか。

その頃には母親は、居て当然ながらも

居なくてさほど不都合のない存在になるのだろう。

 

いまいちど

子を捨てる

鬼に化すとしたら

わたしがなにを望むのか

自分にすらわからなくなるだろう。

 

 

 

 

72

魔がさした。

 

関係性を見直そうと提案するはずだった。

 

まぁ

毎度のことなのだが、

こういう話になると、長い時間をかけて

怒濤の反撃を喰らう。

浮き沈みしながら語りに語る彼が

いちばん最後に必ず言う台詞が

 

こんなふうにこんな時間まで長引かせて

明日起きられなかったら

どう責任を取ってくれるの?

不安にさせてさせたまんま、明日のことなんか

知るか?

 

だ。

 

そこまで散々言われ放題な上に

すこしでも反論しようとすれば

ものすごい剣幕で口撃された挙句のトドメなのだから

もはや粉砕骨折の様相である。

朝まで眠らず起こすと約束するも

起こしたところで

代わりに出勤出来るわけでもないくせに

責任取らなくていいって楽でいいよね、と

皮肉を言われるだけだ。

 

彼曰く

年上だから仕方ないのだそうだ。

わたしが年上だから。

何を言われようが

与えて与えて譲って折れて曲げて

それが年下の男を得た女の正しい在り方なのらしい。

年下が年長者と共に暮らすというだけで

もはやそれは特別な気持ちの表明になるわけで、

受ける年上は、

年増オンナと共にいてくれる年下に

感謝こそすれ何ひとつ文句を吐いてはならないのだそうな。

 

捻り潰してやりたいくらいに

腹ただしく、その憎悪の感情を

コントロールしながら対峙するも

乱れては

さらに敵の攻撃箇所を露呈して

血みどろになる有様。

 

求めても求めても得られないからこその

攻撃なのだ、とわかってはいても

やはり痛いものは痛い。

苦痛に顔を歪めれば

そんなのを苦痛だとほざくな、こっちの傷口を見てみろ!と損傷披露が始まる。

 

四方八方塞いでからの

火炎噴射は彼の得意とするところだ。

 

 

どうしたいか?

そりゃ、もう

一目散に逃げ出したい。

 

年上だから全てを受け入れろ?

いやいやいや

だったら、そういう、きちんとした

年上さんを探してきてみなよ?

居るか?あなたのように

難しいオトコを安心させてくれる立派な年上さんが。

 

よくわかった。

わたしは彼のことが

好きで嫌いなのだ。

 

好きで好きで

大嫌いなのだ。

 

論破しては正解不正解を振り分け

反論にさらに反論を投げつけては撃ち落とし

いかに

わたしが愚かで間違えているか、ばかりを

突きつけてくる彼が大嫌いなのだ。

 

悪夢のようだ。

大嫌いなのに

すこしの、好きに囚われてもはや逃げ出すこともできない。

 

 

 

吐きそうだ

 

 

 

かんがえる71

おもったことは

良くも悪くも共に暮らす以上

つつみ隠さず口にする方がいいと思ってきた。

急に不機嫌な態度をされたら

どうしたのかと問いかけたり

含んだような嫌味な言葉を受けたら

不快に感じたと正直に告げたり

 

そうすることで、次回をなくすことが

大事だとおもっていた。

 

けれどもそういうストレートなやり方は

彼には無効だと、重ねるごとに知った。

原因はすべてわたしにあり、わたしの浅はかな考えや、言動に反応しているだけだ、と彼は言うのだ。

 

彼の思う通りのわたしではなかったように

わたしの思う通りの彼ではなかった。

 

唯一だ

ほかにかえがききようがない

なくすことがこわくなる

 

重くて熱いそれらの告白が

えらく薄っぺらいものだと感じ始めたのは

いつからだろう。

 

かつて

彼とこうなるまえに

わたしが燃えるように堕ちた恋は

まさに盲目で

明日も明後日もない、未来がどうなっても

かまわないという堕落の果ての様相で

実際に、わたしは堕ちるところまで堕ちた。

その様を横で見ていた彼は

そのときのわたしのあの狂人じみた勢いが

今度は自分に向けられるのだ、と期待し、

わたしはわたしで

わたしのあの愚かで純粋なあの熱を

今度はわたしが受ける番になったのだ、と

胸を熱くした。

 

けれどもそうはならなかった。

 

彼は

わたしにあわせて自分を変えてきた、という。

そうではない。

変えてはいない。

最初こそ、ふたりになったのだ、と歓喜

その事実だけに酔いしれたものの、

時の経過とともに

わたしから与えられるものを計って、その量を見極め

見合うだけを与えようと冷静になっていっただけだ。

自身の考え方や、芯をゆるがせてまで

わたしを欲したかといえばそうではない。

彼は無条件でわたしを欲してはいない。

 

わたしの言動を先回りして予測したり

過去のそれらを拾い集めては解釈をつけたり

そうして

わたしのことをだれよりも知っている、と

言いながら

その彼からすれば不可解極まりない言動が

どうして起こるのかと、直に問いかけることはしない。

問いかけることなく、自身で結論づけ、

その結論をもとに、だからこの先はこうする、と反論の場をつくることなく実行に移すのだ。

 

 

わたしをしりたいのではない。

披露する相手は、とうの本人しかいないというのに

集めたそれらを分析することが好きなだけなのだ。

 

だから過程や、その時々の事情を

バサバサと端折るし、こちらが説明しようとしても

最後まで聞き取ろうとは絶対にしない。

 

恋愛なんてものは

思い込みと誤解と妄想で出来ているというのに

ちくいち分析すればするだけ

急激に恋愛でなくなる。

 

自分よりも大事におもえるか、

否だ。

 

事実

わたしは、わたしでなくなってまで

彼といたいと思えない、というのが結論だ。

 

我を押し通そうとせず

本音を圧し殺して、彼の琴線に触れぬようにと

努めても努めてもどうにもならず

ひと月ごとに、諍いを起こし

 

やはり彼は変わらず缶ビールを何本も空け

わたしはわたしで

鬱鬱とした毎日をただやり過ごす。

 

 

わたしのせいで

また元の闇に戻って行くであろう彼。

狡いとおもうのだ。

僕の孤独と不幸は

おまえのそれらとは雲泥の差があるのだ、と

わたしに植え付けておいて

 

去るとなれば

生死に関わるかもしれぬ、と、先に杭を打ち込んでおいて

 

非情の極みを

易々とやりきるオンナに仕立て上がらねば

わたしが彼を見限ることは出来ない。

 

離婚をして、周囲をバッサリ切り裂いたわたしに

さらなる罪を抱えて生きてゆけ、

おのれの罪を眺めながら朽ちてゆけと

いうことだ。

 

明日しぬかもしれないんだよ?

好きなことをして好きな場所で

好きなように生きてなんぼでしょ。

人生っていっかいしかないってしってる?

 

ほんの数年まえのわたしが無邪気に説教してくる。

あのこに会いたい。

 

 

打たれっぱなし70

泣くわけにはいかないのでここへきた。

 

すこし忙しく過ごした午前。

午後から萎える気持ちに鞭打って彼の職場へ。

 

実践しなければいつまでたっても戦力になれないと悟り、

ぶっつけで彼の定席にすわるようになって3日目。

 

少しずつだけれど

聞かずに出来るようになった操作があり、

ほんの少しだけ、やれるかも、と思い始めた矢先。

 

ひとりで

たっぷり時間をかけて

調べて丁寧にやればきっとできる業務。

書類を確認、対比したり

キーを叩いたり、書類を機械に挿入したり、

決まった一連の動作がスムーズにゆかない。

 

彼が横に立ち、ひとつ迷うと

脳内フリーズ状態。

いわゆる真っ白になる、というやつだ。

覚えた流れがすべて吹き飛んでゆく。

 

みている方は苛々するだろう。

それはよくわかる。

ともかく焦りを取り払い、言われるままに全てをやり終えたところで、いまいちどメモを取ろうとするわたしを制して

彼が言う。

 

いくらメモをしたところでだめだよね?

いま、自分がどこでつまづいたか、

そのポイントだけ抑えれば済む話でしょ?

僕は、いまやったその業務、1回やったら

出来るようになったよ?

だいたいがさ。。云々。

 

黙ってひたすら聞き続ける。

反論はすることはなにもない。

本当はこんな仕事したくないけれど

しろ!と言われ、するよ!と返した以上

彼のやり方で進めるほかないのだから。

 

わたしはかなり、ひどく、信じられないくらいに物覚えが悪い。

ならメモを。。もちろん取っている。

他人に話しても理解しづらいだろうが、

まずは頭で完全に理解するまでにえらく時間がかかる。

同じところをしつこいくらい行ったり来たりする。

そこから、知識と動作をドッキングさせるとなるとさらに時間がかかる。

ドッキングした!大丈夫だ!となったからといって油断もできない。

油断したら、ふっ、とした拍子に真っ白になる。

 

昼間の仕事の似たような業務ならば

こなせるのだから、たぶん馬鹿ではないのだ。

彼や他の人のように抵抗なく身につけば

どれだけいいだろうかと思う。

 

学習能力のどこかが欠落しているのだといつもおもう。

だから

彼のように苛立ち、なぜ出来ないのか、と真顔で問いかけてくる相手には

真顔で答えたくなる。

 

なぜ出来ないのか、わたしが1番知りたいよ。

 

 

返事をしないわたしにさらに苛立ったように

もうやめる?とたたみかけてくる彼。

 

やめたいからできないとでも思っているのだろうか。

できないことをみせつけるために

毎日来ているとでも思うのだろうか。

やめる?と聞くことの意味を教えてほしい。

それは単なる怒りじゃないか。

 

謝ることも

反論することもなく時間が来たと同時に

帰ってきた。

涙が出たけれど

そんなもんは流しっぱなしにしてても

誰も見ないから問題ない。

 

 

おまえは

ほんとうに

性格も根性も態度も仕事も全部だめだよな

 

そう言われていると感じてきた数ヶ月。

そんななか、それでも彼のところに通う自分を

自分で応援してきた。

 

 

 

彼はわたしのなんなんだろ。

 

つらいことしか

ない