いちばん近くて遠いひと10
半時間ほど前から身を強張らせている。
隣からガチャガチャゴトゴト
なにかを手にしては移動させながら
何処かに集める音がする。
いまのわたしには
ビールをのんではテーブルに缶を置く、カタッという音すら心臓が高鳴るくらいの打撃になる。
おそらく彼は今、これまで集めたミニフィギアや
台所用品を廃棄しているのだろう。
この作業はきっと明け方まで続く。
わたしが部屋から飛び出して
なんらかのアクションを起こさない限り続く。
そうして朝にはいろんな生活雑貨が
ゴミ袋に収められ
無残にあちらこちらに束ねられているのだろう。
食器を袋に入れる音がする。
わたしが隣室で
怯えて動けなくなっていることを
きっと彼は知っている。
ガチャガチャいいながらも
投げつけて割るふうでなく、そろりそろりと
スローなのは
配慮なのか、それとも。
今夜も眠れない。
パジャマを脱いで着替えようか