★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと10

半時間ほど前から身を強張らせている。

 

隣からガチャガチャゴトゴト

なにかを手にしては移動させながら

何処かに集める音がする。

 

いまのわたしには

ビールをのんではテーブルに缶を置く、カタッという音すら心臓が高鳴るくらいの打撃になる。

 

おそらく彼は今、これまで集めたミニフィギアや

台所用品を廃棄しているのだろう。

 

この作業はきっと明け方まで続く。

わたしが部屋から飛び出して

なんらかのアクションを起こさない限り続く。

 

そうして朝にはいろんな生活雑貨が

ゴミ袋に収められ

無残にあちらこちらに束ねられているのだろう。

 

食器を袋に入れる音がする。

 

わたしが隣室で

怯えて動けなくなっていることを

きっと彼は知っている。

 

ガチャガチャいいながらも

投げつけて割るふうでなく、そろりそろりと

スローなのは

配慮なのか、それとも。

 

今夜も眠れない。

パジャマを脱いで着替えようか