★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと9

帰宅後、

自室にこもるようになって10日になる。

 

引き扉1枚隔てた隣室はリビングと

カウンターキッチンがあり、彼はリビングの

ソファで寝ている。

 

少し前にセミダブルとして使っていたベッドを

ふたつに分解してそれぞれのベッドで

眠るようになっており、

リビングには彼用のベッドもあるのだが

彼はベッドを使おうとはしない。

 

長い時間をかけてわたしは彼にある意味

洗脳されているようにおもう。

2人の間で起こる諍いは、すべてがわたしに起因があり、

わたしが良くないから平穏な日々が訪れないにも関わらず

そのわたしが文句ばかり言い、

彼を苦しめている、のだそうだ。

 

話し合いをはじめると

また彼の、彼が構成する図面をもって

おなじところへと導かれてしまうのは必至。

 

疑念を抱け

自分の思考を保て

 

頭の中でイエローランプが点滅する。

 

 

隣から聞こえる物音が怖い。

ふいに彼がまた扉をあけて椅子を蹴り

掴みかかってくるかもしれない。

 

ぷしっ、っとビールをあける音に

カラダがびくっ、っと反応する。

 

そう、彼はわたしを追い詰める側のひとなのだ。

 

おまえは間違っている

おまえはいつも失敗する

おまえは駄目な人間だ

 

そこに愛はあるのだろうか

どれだけの理由をもって

唯一の味方であるはずのわたしを

脅かすのか。

 

 

この幽閉生活に終わりはくるのだろうか。

先がまったくみえてこない。