★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと17

ゆうべ

会話もないままに、うつらうつらしていたら

いつのまにか眠っていた。

毛布にくるまり丸くなっているところへ

布団がかけられた気配で少しだけ目が覚めた。

彼がかけてくれたのか。そういうことするんだ、このひと。

意外におもいながらふたたび眠りに戻って朝をむかえた。

 

彼と暮らしはじめてから、驚くことは多々あった。

相手のペースを尊重する、とも言えるが

彼の言動は、わたしからすれば優しさがない。

 

たとえば

コーヒーを淹れるときに

相手も飲むかしら?と思い、飲む?と

聞くのはわたしにとっては当然の事。

 

うたた寝している彼に、冷えないよう毛布を

かけることも当然だし

 

事故を起こした、と聞いたらまず

身を案じる言葉をかけるし

 

具合が悪いといわれれば、薬、通院、できるだけ早い対処をさせようとする。

 

彼はそうではないのだ。

 

コーヒーは飲みたければ自分の分だけを淹れ

うたた寝したら朝まで放っておき

事故を起こしたらまず不注意を叱り 

具合が悪いと言えば、わたしの対処を遠巻きに見ている。

 

コーヒーもうたた寝

相手のペースを尊重して無理に自分に合わせようとさせないようにしているのだ、と言われたら、なるほど、と言わざるを得ないのだが。

 

わたしのことを、

自分にとっては唯一無二の存在である、と

常々言うわりに

だからといって特別扱いするわけでなく、

そこは僕ルールの範疇で、という感じ。

 

わたしがいなくなれば

ひとりぼっちになることは明白なのに

そうならないように、こちらに合わせるわけでなく

なったらなったで仕方ないし、いいけれど

ならないようにやってはみているよ、というふう。

 

今日はなんだか少し動きたくなって

午後からひとり、買い物に出かけた。

以前は週末のお出かけは必ずふたり一緒だったのだが、ここ最近、ひとりで出かけることが増えた。

いっしょにいく?と問いかけようか迷ったのだけど

彼が仕事の書類を持ち帰っているのをみて

不在にする方がはかどるでしょ、と勝手に決めた。

 

近くの図書館へ行き、マックのドライブスルーでポテトとコーラを買い、食べながら100均を目指し、ホームセンターに寄って

最後にスーパーに立ち寄って夕飯の食材を買って、3時間ほどのふらふらタイムのち、帰宅。

 

休日は何をするにもかならずふたりだった頃は

スマホをさわることも、本を読むことも

手芸に集中することも、なんだかはばかられる雰囲気だったので

興味があってもなくても彼がつけたテレビをソファにならんで鑑賞したり

お昼寝をしたりして

なにからなにまでいっしょに同時に、に縛られていた。

それはおかしなことだと、おもいながらも

彼がそれを当然だと思っているフシがあったので、平穏な日々を過ごすためのルールのように思ってきた。

 

ひとりひとりが好きなように過ごし

タイミングが合えば

ふたりの時間を持ち

眠るも起きるも自由。

シェアハウスの住人に移行していくのかもしれない。

恋人でも、夫婦でもなく

友達よりはずっと深く

同士というにはソリが合わず

 

 

夕飯は久しぶりに餃子を作ってみた。

ひと口サイズを40個ほど。

ビールのアテにもなるだろうから、と

彼にも振る舞う。

 

ふたりについての話はしない。

バイトの話も

わたしが彼について思うことも。

 

休息がまだ足りないようにおもうのだ。