★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと 3

おととい4回目の恐怖の夜を過ごした。

 

お気づきだとはおもうが

4回もそんなメにあうということは

 

わたしもかなりの馬鹿で懲りない性質なのだ。

 

 

初回の時は直後に車に当面の着替えと

仕事道具と薄い寝具とわずかなお金を持って

家から離れた。

夜になる頃

出てくまで半月猶予を与えるからいったん戻ってよい、とゆ

ラインが来た。

飛び出してはみたものの行くあてもない。

戻りたい場所はあれど

所持金も乏しく辿り着くことがかなわない。

腫れた顔では仕事にもゆけず

さすがに連日ボコされることはないよね。。と

屋根を求めて舞い戻った。

 

彼は

あれほど激しく暴れ

わたしを打ちのめしておきながら

怯えるわたしの表情が脳裏から離れないと

顔を歪め

暴力で対抗するというのがどれほどに

卑劣な行為であるか、話し始めた。

前後がどうあれ、手を出した時点で

絶対的な悪は手を出した側だ、とまでゆ。

 

お前が言うか?

 

と、つっこみたいところだし

なにより

わたしのこの腫れ上がった頰をよく目に焼き付けなよ、と無言で呪いながら

 

ともかく2度としないと言う。

 

不思議とあれは夢だったのかしらとおもえるほどに

わたしは落ち着いていた。

けど、心で

 

(そうかな、しないかな。

しなくはないとおもうよ。。

だって、なんていうか、手慣れてた、というか

やりかたを知ってた、みたいに見えたというか

 

わたしのなかでもうあなたは

「殴るひと」に確定してしまったから

次が無いことに期待はするけど信用はしない。)

そう思った。

 

 

そうしてやはり次があり、その次もあり。

 

2回目の時は

激しい口論のさなかに

彼がわたしの大事にしていたタブレット

執拗に床に叩きつける様子をみて

 

またしても脳が弛緩してしまい

もうやめる。。

いっしょにいることをやめる。。と呟いたばかりに

誓いはどこへやら

気がつけば髪を掴まれ壁に押し付けられ

身体を震わせるわたし。

 

この時

もう手を上げないって言ったのに、と弱々しく言うわたしに彼が言った言葉は

この先も撤回されない鉄板となっている。

 

「ぼくから離れたハナコハナコではないのだからいいのだ。そんなヒトはどうなろうがかまわない。

ぼくが手を上げないと誓ったのはハナコなのだから。」

 

 

おとといの夜は

髪を掴まれ頭ばかりを執拗に叩かれ叩かれ

軽い内出血が起こっているようで今も

触ったり大きく口を開けると痛みが走る。

 

叩かれ始めたあたりからわたしは無言のままなのだが

憑依獣はだからと言って手を緩めたりはしない。

ひとしきり怯えさせてわたしを黙らせることに成功してもなお、気の鎮まらない彼は

泣き腫らし、乱れきったわたしに

ビールを買いに行けと言う。

夜中の2時。

 

黙って着替え、車に乗ったら霜がフロントガラスを覆い、発進できない。

しばらくエンジンを回してから、と、息を吐いたとたんに

ブレーキペダルに乗せた右足がガクガクガクガク震えを大きくしはじめた。

 

今回はもう許せないな。。ないな。。

そう思いながらエンジンを止めていったん家に入る。フロントガラスにかけるお湯をペットボトルに入れようと彼の横を通り過ぎて

キッチンに。

空のペットボトルにお湯を注ごうとするのに

手が震えてうまくゆかない。

じっとその様子を伺っている彼。

 

静かに再び横を通りながら

このままどこかへ逃げようかと考える。

 

つづく