★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと39

灯油が切れた。

買いに行くべきか、春を待つか悩むところだ。

朝晩は冷え込むが我慢出来ないほどではない。

 

仕事のキリが良く、いつもより早めに帰宅。

彼が夕飯を支度するのを待って

食べ始めたと同時にキッチンに立つ。

自分のを用意して、彼の隣で食べる。

 

洗い物も各自で済ませ、

彼がソファに横になったところで

いっしょに夕寝をしようと、

わたしも毛布に入れてよ、と声をかけてみる。

 

返ってきた返事は

 

寝ないょ

 

スペースを空けるつもりはないらしい。

 

ならいいや、と答えて

ベッドに入り、いつしか眠ってしまった。

久しぶりにやってきた生理は大量で、昼間から

けだるさと眠気にやられていたのだ。

 

彼に甘えてはいけない、と、そうしてきたのに

すこし温かみある抱擁を望んでしまったのは

きっとこの生理のせいだ。

悔やむも、そりゃそうだよね、と納得する。

 

激しい喧嘩のあとに

わたしがいつも、まず、のぞむのは

互いに身を寄せ抱き合い存在を認め合う儀式のようなスキンシップ。

安心しあってから、話し合いをしたい。

彼はそうではない。

まずは話し合い。彼の落としどころが見つかるまで続く長い長いディベート大会。

そうしてからでないとスキンシップには至れないという考え。

 

今日の拒絶はさらにわたしを遠ざける。

わかっていながらそうするのだから

受け入れるほかない。

 

彼氏彼女という特別な存在枠から、

そうではない枠への

移行の流れは止められないということだ。

 

不満は口にはしない。

彼を咎めない。

経済的な負担を課さない。

 

鉄則だ。

 

ここにいなければならないわけではないし

彼のひとこえで、

すぐさま出てゆかなければならなくなる身。

急遽に対応できるように

少しずつ用意をしてゆかねばならない。