★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと38

週の半ばが過ぎようとしている。

 

ゆうべ、彼がバイトから帰宅後、

洗濯機を回し始めた。

 

洗濯は朝にわたしがするから、と申し出て

翌朝から出勤前に干して出ていたのに

なぜだ。。疑問に思いながら考える。

 

⓵単につい、癖で洗濯機を回してしまったから

干す、までやった。

 

⓶わたしが洗濯機を回した朝、

柔軟剤が切れかけていて、わずかしか入れなかったため、仕上がりが悪く、任せたくないと考えた。

 

⓷やっぱり洗濯は自分がしたい、と思った。

 

まったくわからない。

そういえば、不可解な事はほかにもある。

 

以前から彼の買い物を頼まれることが

ちょいちょいあったのだが、

給与個別管理になってからは、あたりまえに差し出された代金が、今はない。

頼まれた買い物といってもビールくらいのもので、額にしても大したことはないので

まぁ、かまわないのだけど、その真意が読めない。

 

1本ずつ買う、2リットルの水も、無くなりかけると、冷蔵庫から出して流しのとなりに少量残った状態で、置いてある。

無くなるぞ、買っとけよ。なのか?

 

先日はトイレの便座が上がったままになっていた。

彼は大小どちらも、洋式トイレに座って用を足すひとなので便座は上げない。

便座カバーをかけていない便座は

ときおりチェックしないと裏側が汚れている。

見つけたらトイレ用洗剤スプレーを吹きかけて

トイレットペーパーで拭き取るようにしている。

上がった便座は汚れていた。

汚れたぞ、きれいにしとけ、なのか?

 

洗濯も水も便座も

聞いて確かめればいいだけの話。

 

わかっちゃいる。

そんな気になれないだけで。

 

朝、先に起きて

まだ眠りの中にいる彼にキスをするとき

彼はそれを拒むわけではない。

むしろ、ん。。と、すこし呻きながらも

求めてくるかのようにさらに唇を押し当ててくる。

その一瞬、優しい気持ちになり

閉じた目や頰にキスをしてゆく。

そうしてからコーヒーを淹れる。

 

わたしと暮らす前

彼の飼う猫が毎朝布団に寄ってきては

彼にキスをしていた、と聞いたことがある。

 

猫の手も借りたい、の猫だ。

つまりは、猫ほどしか役に立たなくても

手伝わせたいほどだ、ということ。

 

猫がやってのけたくらいのことしか

しないわたし。

 

なるほど。

わたしもまた彼にとっては

言葉をかけても通じない猫だから

 

ペットボトルは残量を見せ、

便座は上げて汚れを見せ、

買ってくることやきれいにすることを

期待するでもないのだろう。

 

いま、また帰宅した彼が洗濯機を回し始めた。

わたしの出した3つの答えのうち、⓵は無いことだけは明確になったわけだ。