★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

日本のまんなかあたりで

エアコンをいれるくらいに肌寒い日だった。

 

出勤はしたものの、明日以降の在宅勤務にあたっての説明を受けて解散。

これほどにウィルスが蔓延するとは

思ってもみなかったし、短期収束、オリンピック開催には間に合うのだろう、と楽観していたことが嘘のようだ。

 

罹患しても大半は軽症で終わると聞いている。

にもかかわらず、恐ろしい病気だと世界が慄くのは、皆が感染経路を見守るなか、じわじわと確実に拡大する様が明瞭だからだろうか。

特効薬が開発されていないからか。

毎年流行するインフルエンザだって死者は出るだろうし、職場の誰かが罹患したら周囲にも広がってゆくけれど

解明しきれていない病とあっては

エリアの第1発病者になるわけにはいかない。

たとえ不可抗力の流行り病であれ、感染源となれば罪人扱いだ。

 

ウィルス蔓延と言われはじめた頃、

社員の過半数はマスク着用で出社してきた。

マスク着用くらいでは防げないらしいよ、と

何処吹く風の人もいたし、どちらかといえば

わたしも、常、そちら側の意見なのだが、

今回ばかりは当初からマスク着用を継続してきた。

万が一、自身が罹患したときに

周囲に撒き散らす事をおもうと

一応の対策はしたけれど、移してしまいました、と弁明出来るくらいの事はすべきと考えたからだ。

 

なにを根拠にだか、いったん、感染ピーク超えの見通しが言われはじめた頃、

社内のマスク着用割合はかなり減った。

 

わたしは元々マスクが嫌いで、1日中着用していたことなど過去なかったのだが、

着用しはじめると、

目だけを晒して人前に出る気楽さが気に入ってしまい、手離しづらくなって着用を続けてきた。

 

マスクの下で、ぽかぁん、と口を開けていようが、欠伸をしようが、リップが剥がれていようが

誰にも見咎められないのが気楽で。

 

ここへきて、緊急事態宣言が出されたとたんに

社内のマスク着用率は100パーセントになった。

大手だろうに何故だ、と疑問に思っていた、社員へのマスク配布もようやく始まった。

 

いつもおもうのだ。

 

世界にはたくさんの国があり

国と国は争い、時に殺しあう。

それは国が、ひとつの単位だから。

 

では、地球がいくつもあったとしたら

地球単位で戦うのだろうか。

 

星ひとつの絶滅をかけて戦うのだろうか。

 

そうなったら、星がひとつの単位となったら

地球の国々は手を結び一丸となるのだろうか。

 

異星人が侵略してくるとなれば

国単位で争っている場合ではないぞ、と、

そのくらいのことは理解するのだろうか。

 

この流行病を今、世界中が注目している。

他所の国で起こっている出来事、と、傍観してはいられない事態だ。

世界は、どの国にも、まんべんなく良くないことが起こると

ひとつになれるのだろう。

 

肌の色も、宗教も、男も、女も、関係なく

世界中の誰もが

たったひとつのことに意識を集中させる瞬間があるとしたら

それはやはり、映画のように

空から巨大な隕石が落ちてくる瞬間に

限られるのだろうか。

 

世界中の誰もがひとつのことに

意識を集中させるその瞬間に立ち会えたなら

あとのことはともかく

立ち会えたことはとても幸せなことだと

わたしは思うのだ。