★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと57

ゆうべ

ご無沙汰しすぎた友人にラインを。

 

流行病の事。

マスクは足りているかの確認。

ついでの近況報告。

 

彼との出来事は

かいつまんで話しても伝わりにくい。

いっしょに暮らしているけれど

話しもせず、ご飯も別で。

そうなった理由は鬱積したものをぶつけ合った結果、わたしは悪態をつき、

彼は執拗に手を上げ、

互いに傷まみれになってしまい、

彼はどうだかわからないけれど

わたしはどうしても彼を許すことが出来ない。

 

簡単に言うとそういう話なのだが、

聞かされた方は意味がわからないだろう。

別れてはいない。許せないのに?

 

いつもの痴話喧嘩との区別がつかないだろうと思う。

 

なんというか

彼の中からも、

わたしの中からも

男女が向き合うときにいちばん必要なものが

すぽっ、と抜きとられたような感じなのだ。

中身が抜きとられたまま置かれている容れ物がふたつ並んでるだけ。

 

寝ている彼の内側に身を滑らせて

眠ろうとすれば、厭わず受け入れられるし

寝顔にキスをすれば

求めるようにさらに唇を合わせようと

突き出してくる。

 

だから

だからどうなるわけでもない。

 

職場に居座ったところで

話しかけても、わずかな言葉しか返ってはこないし、

彼から話しかけられることもない。

もう、いやだ!と

彼を罵るだけの気迫もない。

 

仕事を覚えに行っているのだから

集中してわからないことを聞き、メモをとり、

実践させてほしいと頼むべきだ。

頭ではわかっている。

なのに語りかけることを躊躇う。

 

生温いお湯で火傷をしているふうで。

 

彼と離れたくて仕方がないのか、と問われたら

否、と、答えるだろう。

では、共に居たいのだね?と言われたら

それも、否。

 

要するに

 

どっちでもいい

 

考えたり、悩んだり、凹んだり、浮いたり

怒ったり、

そういうことに

疲れ果ててしまったのだ。

 

いま、このときに

出て行ってほしい、と言われたら

物理的に困難ではあっても

わかりました、と応じるだろう。

逆に

ずっと側にいてほしい、と言われたら

わかりました、と受け入れて

いまよりは過ごしやすくしてゆこうね、と

提案するだろう。

 

ただ

残念ながら彼はきっとこの先も

自分はこうしたい、とは口にしない。

かれもまた

 

どっちでもいい

 

のだろうとおもう。

 

出てくなら出てけばいいし

居るなら居ればいい。

 

いまのこの状況は変わらないし

変えようとも思わないけれど

それでどうするかはわたし次第というわけだ。

 

低温火傷

いずれ痛みを感じるようになり

あわてふためいて処置をしようとするのだろうか。

 

いまは熱さも痛みも感じないというのに。