★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと42

連休明けの月曜日。

すこしだけ気持ちが重くなるも気合いをいれて出勤。

 

あっという間に夕方を迎え帰宅すると

彼専用カレーが仕上がっていて、炊飯終了タイマーが鳴り響いていた。

今日のわたしの夕飯は、昼間食べ損ねたジャガイモとタラコのチーズパン。

彼がバイトに出勤してゆく前に食べ始めた。

 

いってらっしゃい、が耳に届いたのか届かなかったのか、はたまた

わたしが、はぃ、の返事を聴き損ねたのか

静かに部屋を出た彼を目で追うこともなく

ちいさな吐息が漏れる。

 

ミネラルウォーターが切れたことに気づき、とセンター止めにしてあった荷物があることを思い出し、着替えてすこしだけ外出。

帰宅して

昨日から始めた人形作りを再開。

 

手足が長く細い身体部分は完成している。

少し凝った衣類を着せようと、まずは下着から作り始めた。

赤字に白の水玉トランクス。

女の子を作るつもりだったのに、目鼻をつける段になって性別変更。

紫と白のストライプシャツを作ることにした。

型紙はざっくりと。

大まかに前後の身頃を裁断したら、端の処理をして縫い合わせ、人形に着せて身体のラインに合わせて待ち針で微調整。

袖を裁断して端処理をし始めたところで

彼が帰宅した。

 

おかえりなさい、といいながら目線は針に向けたままのわたし。

感じ悪いな、これじゃぁ、と思いながらも

目を離し、手を止める気になれない。

はぃ、の返事も聞こえたような聞こえなかったような。

 

1円にもならないような、

こんなことをして過ごすのが、わたしは好きだ。

いつも、思い描いた通りの完成度には至らないけれど、思い描く工程が好きなのだ。

 

かつての住まいでも、わたしはずっとこんなふうに、隣室に家人がいながらにして

孤独だった。

 

当時のわたしを彼は知っているし、同じころ

彼もまた家族がいながらにして、

ひとりぼっちだったことをわたしも知っている。

 

きっとふたりとも

それが不満だとこぼしながら、その実、

そうしていることが性に合っている、とも

思っていたのだろう。

 

気配があり、ときに話しかけられ

あとはほっといてくれる。

怒っているの?なにかあったの?と

煩く詮索されることもない。

身勝手なわたしと彼には

いまのこれもまた悪くない環境なのかもしれない