★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと43

眠気に耐えながら帰宅。

 

彼は2日目のカレーを食べ終えて

バイトまでの小一時間を仮眠にあてていた。

わたしも軽くレンジで温めた冷凍食品を食べ、

いつしか眠りに。

 

バイト仕度を始めた彼が立てる

遠慮のない音に目覚めた。

18時過ぎ。

彼が出てゆくのは35分頃。

連休に図書館で借りて読み続けている本の続きを借りに行こうか、しばし考える。

彼をいってらっしゃい、と見送り、ちいさな

はい、を聞き、玄関の鍵をかける音を聞くと同時に着替えはじめる。

図書館は19時閉館だ。

急げば18時45分には到着できるだろう。

続編を借りるだけなら5分とかからない。

 

車を走らせながら

わたしは、いや、わたしだけが、

自分の欲求を満たせる日々を送っている、と感じる。

 

仕事をし、趣味の読書を愉しみ、仲間と語らい、美味しいものを食べ、眠りたいときに眠り。

反して彼は平日朝から夜までたっぷり働き

仕上げだ、というように1日の終わりにビールを飲み、眠りにつく。

いまの彼に愉しみはあるのだろうか。

 

人形のように、いってらっしゃい

おかえりなさい、だけを繰り返す同居人。

談笑したり、共感しあったり、することもない。

頼めば生活に必要なものは買ってきてもらえるが、自分のために、となにかを与えようとはしない。

 

わたしの存在は

それでも意味があるから、何も言わないのか

言ったところでどうにもならないと

失望しきっているのか。

ただ、何も考えていないのか。

 

桜がちらつく季節になったというのに

この部屋はまだまだ秋の入り口のようだ。