いちばん近くて遠いひと47
ソワソワしている。
彼と共通の知人に誘われたお食事会。
勝手知ったる仲とはいえ、
場所のみ指定があり、時間が定かでない。
今朝、彼に、何時始まりか連絡はあったか、
問いかけるも
さぁ、6時くらいって言ってたんじゃないかな
と
気のない返事。
もう間も無く6時なのだが、着替えてスタンバイしているのはわたしだけ。
彼は部屋着のままゲームに興じている。
今朝から変わらず会話はなく、
わたしはわたしで出かけ、帰宅してゆったり。
彼は呑むだろうからわたしは運転手だ。
またしても無言のまま店に共に向かい
その場かぎりの仲よさを演じ、
案ずる彼女を少し安心させて帰宅するのだろうか。
どのみち、彼女からは
その後、ふたりの関係はどうか、と尋ねられれば
わたしはありのままを伝えるのだから
演じることに意味はないのだが。
彼自身、彼女がわたしの相談役を果たしている事は想像に難くない筈で、
だとしたら
三者三様、水面下で薄黒く沈殿したやっかいなものを脚で蹴散らしながらの、
会話になるというわけだ。
逃れようがないのだから受けて立とうじゃないか。
なにしろ、今日のためにわたしは
営業先になりうるかもしれないある方との
約束を、直前で反故にしてまで
この食事会に参加するのだから。
正直、気が重い。
できるなら彼だけで行かせてあげたい。
募る鬱積を、彼女に掬い上げてもらっといでよ、と背を押して送り出したい。
彼女から電話だ。
彼が受けている。
キャンセルの気配がする。
どっちだ。
店を探しているようだ。
キャンセルではない様子。
店が変わるだけか。
やはり決行みたいだ。
電話の内容はもちろん聞こえているが、
伝えようとすらしてこない彼。
きえてしまいたい