★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと47

ソワソワしている。

彼と共通の知人に誘われたお食事会。

勝手知ったる仲とはいえ、

場所のみ指定があり、時間が定かでない。

 

今朝、彼に、何時始まりか連絡はあったか、

問いかけるも

さぁ、6時くらいって言ってたんじゃないかな

気のない返事。

もう間も無く6時なのだが、着替えてスタンバイしているのはわたしだけ。

彼は部屋着のままゲームに興じている。

 

今朝から変わらず会話はなく、

わたしはわたしで出かけ、帰宅してゆったり。

 

彼は呑むだろうからわたしは運転手だ。

またしても無言のまま店に共に向かい

その場かぎりの仲よさを演じ、

案ずる彼女を少し安心させて帰宅するのだろうか。

 

どのみち、彼女からは

その後、ふたりの関係はどうか、と尋ねられれば

わたしはありのままを伝えるのだから

演じることに意味はないのだが。

 

彼自身、彼女がわたしの相談役を果たしている事は想像に難くない筈で、

だとしたら

三者三様、水面下で薄黒く沈殿したやっかいなものを脚で蹴散らしながらの、

会話になるというわけだ。

 

逃れようがないのだから受けて立とうじゃないか。

なにしろ、今日のためにわたしは

営業先になりうるかもしれないある方との

約束を、直前で反故にしてまで

この食事会に参加するのだから。

 

正直、気が重い。

できるなら彼だけで行かせてあげたい。

募る鬱積を、彼女に掬い上げてもらっといでよ、と背を押して送り出したい。

 

彼女から電話だ。

彼が受けている。

キャンセルの気配がする。

 

どっちだ。

 

店を探しているようだ。

キャンセルではない様子。

店が変わるだけか。

 

やはり決行みたいだ。

 

電話の内容はもちろん聞こえているが、

伝えようとすらしてこない彼。

 

きえてしまいたい