★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

閑話休題3

仕事の同僚らの話を。

 

個々に対すると親切で気さくな善人ばかりなのだが、裏事情というのがあるようで

図式にすると相思相愛純粋なハートマークを描けるラインはごくわずか。

 

なかでも件の怪獣カナちゃんを筆頭に

輪を掻き回さんと暴れるコは少なからず存在する。

対立する当人同士だけで宇宙の果てまで飛んでって気の済むまで戦ってくれたらいいものを、

チーム戦にすべく味方を募るせいで、面倒なことになる。

 

カナちゃんが、あなたの事をこう言っていたよ、とか耳打ちし合うセンスがよくわからない。

陰口は陰で叩くものだと知らないのだろうか。

当の本人に伝えてしまったらそれはもはや陰口ではない。

そういう稚拙なやりとりは小学校あたりで終わらせてこいよ、と思うのだ。

 

カナちゃんや、アサミは、確かに怪獣だけれど

彼女らの攻撃はストレートでいやらしさがない。

がぁがぁどこでも吠えるし噛み付くが、

背後から密かに抓るようなやり方はしない。

 

だれの味方でもあるふうに装いながら

とぼけた顔で、陰口には聞こえない絶妙な陰口をあちこちで、ポトポト落として回る輩こそが、最大の害にして、排除が難しい。

 

最近目につく困ったちゃんは、最大の害とまではいかない、怪獣達の背後に隠れて存在は薄めのヤマカワさん。

服装から髪型までコダワリのひとだということは一目瞭然。

まだ新人さんのポジションにいるため、雑務は彼女を含む数人の仕事となっている。

だれの目からみてもヤマカワさんは、雑務をよくこなしている。それは讃えられる事なのだが、自分ばっかりやってます、の不満が言動となってポロポロこぼれてしまう。

同じ新人さんが遅めに出勤して雑務を回避してばかりいるから、わたしもそうすることにしてます、だとか、口にしてしまうのだ。

不満を漏らすくらいならば、ひとりキリキリ舞いになるほどに雑務を担う必要はないし、彼女が居なければ居ないなりに先輩陣が代わってやるだけの話。

ちょくちょく相談事のラインを飛ばしてくるヤマカワさん。

相談というより、愚痴と特定の同僚の悪口なのだが、

下手に味方になって同調しすぎると、

ハナコさんもそう言ってました!と、どこで振りまかれるかわかったものではないので

悪口に乗じないよう、一般論としての解釈とアドバイスをするに徹している。

だいたいが

ハナコさんはオトナですよねー、と返ってくるのだが、社会人で、家庭を持ち、子もいるのだから、あなたも立派なオトナですよ、と心で思う。

 

たぶん、だけれど

彼女は自分を、良い人だと思っているのだ。

進んで他人の世話を焼き、

他人の嫌がることを率先してやり、

噛みつかれることはあっても自ら噛みついてはゆかず、

自身は被害者にはなっても加害者になることはないと信じている。

 

自分評価より他人評価の方が大事なタイプなのだろう。

 

彼女をわたしの最大の味方にする方法がある。

彼女のターゲットの悪口にたっぷり同調して

いっしょにこき下ろし、

ヤマカワさんばっかり雑務をしてるじゃない、

やりすぎだょ、ほかにもやらせなよ、と

労いながら彼女以外を攻撃し、

人が良すぎるばかりに損ばかりしているヤマカワさん、というラベルをペタペタ貼ってあげればよいのだ。

 

誰しもみな、自己顕示欲を満たしてくれる人を好む。

 

かくいうわたしは、さて、他人からどういうラベルを貼って欲しがるのか。

 

洞察力があり、

他人と異なる視点から物事を見て、

何が起こっても深刻になりすぎず

自分の人生は自分のものだ、と正しく理解して、

飄々と世を渡っている、

 

わたしが望むのはそういうラベルだ。

 

残念ながら、そんな込み入った評価を下すほどに真剣に、わたしを観察し続ける人などおらず、

なにより、わたしの望むラベルは、

あくまで理想なのだから

仮にそういうラベルを貼り付けてくれたひとがいたところで、そのひとは

 

わたしにまんまと騙される程度の

観察眼しか持ち合わせていないということだ。

 

それでもきっと

わたしの望むままのラベルを貼ってくれたそのひとを

わたしは大好きになるだろう。

 

かつての彼がそうだったように。

彼の場合は、一枚上手で、

わたしが貼って欲しがるであろうラベルを見定めて

あえて騙されたフリをしていたのだと、

今になってよくわかる。

 

優しくて、すこし残酷だ。