★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと59

在宅勤務となって3日目。

時間的余裕があるため、隙間に図書館へ。

 

たくさんあるテーブルも、窓際のPC専用デスクも、椅子が撤去され、使用できなくなっている。

あちらこちらに館内使用制限中を表示する張り紙がある。

本の貸し出しのみ、利用可ではあるものの、

職員対面対応を避け、センサーによる本とカード読み取りで貸し出し処理せよ、との事。

 

近くのコンビニでは

レジ台の上部から厚手のビニールシートが垂れ下がっている。最初に見たとき、何かの冗談かと思って少し笑ってしまった。ほとんどの人が外出先でマスク着用しているなか、あのひらひら揺れるビニールシートの効果がいかほどなのか、分かりかねるが、配慮してますアピールにはなるだろう。

 

出入りする施設には、どこも除菌スプレーが設置してある。

休業している店舗も目立ちはじめた。

 

これほどに皆が真剣に自衛策に取り組む様を目の当たりにしたことがあっただろうか。

 

非日常、というのは

わたしの気を緩ませる。

 

たとえば台風が接近したとき、

たとえば停電で暗闇にいるとき、

たとえば今回のように非常事態宣言が発令されたとき、

 

日常ならざるところにいる、というのは

本来、困った事態なのだ。

わかっちゃいるし、死者が出るレベルの深刻な状況なのだが、

わたしのようなダメな人間にとっては

アレもコレも仕方ないよね、で済んでしまう優しい世界に映るのだ。

 

仕事にならなくても、

会社は一応の給与保障をしてくれる上に

営業成績を問われることはない。

 

彼とのちぐはぐした関係も

世の中がこんなだし、

わたしが愚かで変だとしても

今は仕方ないのじゃないか、と思えたりする。

 

人前ではそれらしく

大変なことになりましたね、

困りましたね

身動きがとれませんね

眉をひそめてみたりするけれど

 

ほんとうに困っていたら、

他人事みたいにそんなふうには話せないものだ。

 

ただ、

視界を広げた先には

遠くに住む子供らがいて

彼らの身に危険が及んだときに

はじめて

これが大変なことだと理解するのだろう。

 

 

わたしは誰より身勝手だ。

開き直るでも、自責の念にかられるでもなく、

単に事実として

そうなのだ、と今、おもう。