★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠いひと64

1日ずつリセットしてゆかないと

闇に気持ちが引き摺り込まれそうになる。

 

彼とわたしは別人だから

わたしの望む反応でないからといって

気に病んだり萎えたりする必要はない。

 

相手に期待をするからいけないのだ。

 

彼もわたしも

極論なにを望んできたかといえば

おまえ、もうひとりのわたしに、僕になれ、だ。

 

おかえり、と、声をかけたら

ただいま、と、かえしてほしい、とわたしは

望む。

機嫌や体調にかかわらず、だ。

 

だが、彼はそれをしない。

 

彼サイドから考えるとするならば

おかえり、と言うのは言う側の勝手で

勝手に声をかけておきながら

ただいま、と、かえせ、と言われても。

はい、と返事をしているではないか。

 

というところか。

 

わたしの主張がおかしいとは思わないように

彼も彼でおかしいと思わないのだから

どうしようもない。

オーディエンスで決めたところで納得できないだろうし。

 

恋愛が終わり

もはや気持ちが冷え切り

自分にとって特別で、愛おしいと感じていた筈の相手が

その他大勢の誰かと変わらないポジションに

降格してしまった、と

そう感じるなら別れよう、という話し合いに

なって然るべき、とわたしは考える。

 

現に今、彼から感じる気配はそれ以外のなにものでもないわけだが、

彼から申し出を受けることはない。

いつだってそうだ。

決めるのはわたしだ、と言われ続けてきた。

彼曰く、選択肢があるのはわたしだけ。

彼には選択の余地がないのだとか。

わたしが去ればまたひとりに戻る彼。

今だって、ひとりきり、とかわらないような

暮らしぶりだけれど。

 

つまりは、

わたしがどうしたいのか、だけで考えればいいのだ。

もうこの先、以前のように時間を共有したり

手にしたものを分け合ったり

そういうことが出来るとは思えない。

話しかけても反応がないことにちいさく傷つくことに慣れてしまいたくはない。

ならば傷つかないようにすればいいと、

彼に構わないようにすると

状況はいつまでたっても変わらない。

では彼の元を去るのか。

 

ずっとずっと数ヶ月かけて考えてきた。

やはり彼がわたしにしてきたことは

自身の理想を押し付け、

それに反発することを許さないというもの。

いや、許そうと幾度も折れながら、結局

折れることで次の憤懣を増加させてしまった。

結果、執拗に手を上げた行為は許しがたい。

 

彼がわたしにしたことは許すことができない。

彼、というひとについては否定できない。

わたしは彼が好きなのだ。

 

罪は憎む。

彼を憎むことはできない。

 

だからなお、こうしてとどまっているのだ。

 

彼がどう感じているかはわからない。

きっと問い質してもわかりようがない。

ひとの気持ちなどというものは

流動的かつ、ちょっとしたことで

逆流したり、渦を巻いて停滞したりする。

 

互いに

相手次第でどうにだってなる。

 

動かなければこのままだ。

彼は動かない。

 

 

わたしは

だから

いつだって自由だ。

 

それがひどくさみしいことなのだ、と

どれだけ説明したところで

彼には理解できないだろう。

 

彼はずっと彼自身のことだけで

頭がいっぱいなのだから。