★ひとファイル★

馴染んだ、親しんだ、愛した、嫌った、わたしが出会ったひと達のお話

いちばん近くて遠い人35

昨日はホワイトデーだった。 彼と。。再会、といおうか、 顔を合わせたのがちょうど4年前のホワイトデーだった。 4年前のふたりが今の私達の様子を見たら きっと驚くだろう。 目を合わせる事も出来ず、わたしが視線を外したタイミングで、わたしのことを熱…

いちばん近くて遠いひと34

昼間は春めいた陽気。 まだ朝夕肌寒くはある。 夕方からバイトに出る彼を見送ることに なれてきたようなそうでもないような。 今日もふたりの会話はわずか。 昨日より少しだけ多い。 おふろ、入ってないのか? ひさびさに彼発信の言葉。 シャワーを浴びよう…

怪獣3号カナちゃん

件の職場怪獣3号カナちゃん。 お父上が地元の名士とあって その名をふんだんに活かして 入社するやいなやガンガン成績を伸ばし 諸先輩方を圧倒することはや1年。 ラインのアイコンの下に、ご丁寧に 旧姓を入れ、かのお父上の娘であることを 誇示するセンス…

いちばん近くて遠いひと33

話をしなくても いられるものなのだな。 気持ちが落ちたり、心配事があったり 不安な思いに苛まれていても 相手にさとらせてはならない。 それはそれで横に避けておいて蓋をして 談笑したり、ふざけあったりしなければ、 それくらいは出来なければオトナでは…

美人怪獣あさみ

仕事のノルマ達成を激しく煽られ すこし辟易している。 毎月数字を追うのだが、それは社内規定のポジションによって個々に違う。 わたしには上からふたつ目の数字が課せられている。 仮に与えられた数字が100とするならば 80を毎月クリアすれば給与は安…

ウワノソラのクミコ

すこし気分が下がってきている。 幼少の頃から なにかが足らず、そのなにかに飢えていると感じていた。 気のいい母は、成金一家の長女で、 男尊女卑代表みたいな父親の一存によって 学を与えられなかった。 代わりに良妻賢母であるべく躾けられたわけでもな…

いちばん近くて遠いひと32

こころ穏やかな朝だったのに。 起き抜けに彼のソファに潜り込んで 背中抱っこで無言のスキンシップ。 灯油切れのアラームが鳴り 給油しようと灯油缶を取り出して 口を捻るもなかなか開かない。 彼が給油したあとは必ずこうなのだ。 幾度か、いくらなんでも固…

いちばん近くて遠いひと31

休日。 ゆっくり目覚めて、ソファで眠る彼が 横向きに身体を回すのを待って するりと潜り込む。 背中を彼の胸に押し当てて背後から 抱かれる形をとる。 くの字になった身体がふたつ並ぶ。 寝ぼけてわたしのお腹あたりに手を回す彼。 こうしていると 何もなか…

いちばん近くて遠いひと30

仕事の締め日が近い。 週明けには数字を上げなければならない。 こういうとき、焦りむやみに動いてどうにかなったためしがない。 ラストチャンスに、と取ったアポイントは夕方。 それまでは通常と変わらぬ動きをしていようと心に決めて、昼食を買って彼の職…

いちばん近くて遠いひと29

夕方からの時間がやたら長い。 あまりに長いので、急ぎ帰宅をせず 夕方に仕事を入れてみたりしている。 ほんの数ヶ月前まで 夕飯は当番制で作っていた。 彼が仕事に出るまでの時間に食べるために なるべく早く帰宅した。 帰ると部屋着に着替えて 彼の眠るソ…

いちばん近くて遠いひと28

仕事に夢中になれた1日だった。 合間に彼の職場に顔を出した。 今日はまだまだ初歩の段階の覚えゴトの確認。 いくらメモを眺めていても実践しなければ いつまでたっても覚えられない。 わかっているから、ウエルカムモードには見えない彼の背中に、意を決し…

いちばん近くて遠いひと27

今日も彼は昼の仕事のあと、 夜のバイトに出かけた様子。 今日は彼がバイトに出た後に帰宅した。 彼が、たくさん作ったシチューを、ひとりで温めて食べる背中を眺めるのが嫌だったから、 おそくなります、のラインを入れて、近くのスーパーで時間を潰したの…

いちばん近くて遠いひと26

昨日のこと。 ハンドメイド新作をメルカリに出品しようと、 出品確定送信したら、同じタイミングで彼の携帯に通知音が鳴った。 ん?。。もしや、と確認してみると わたしのフォロワーに登録してるようで、 出品するたびに彼に通知がいくようなってたらしい。…

閑話休題 日常

こんなものを作ってみた。 自分の携帯についているcharmを見本に 見様見真似のハンドメイド。 美大出身の元夫がよく言っていたものだ。 「模倣がホンモノをこえたら、もうそれは模倣ではない」 こえなくても、見本をベースにアレンジしてゆく行程が楽しい。 …

いちばん近くて遠いひと25

眠れない。 夕寝が効きすぎたか。 ついさっき、ファンヒーターの灯油が切れた。 今日はあたたかいと感じたわたしがオフにしておいたものを 彼が寝入り端にオンにしたとたんに 給油ブザーが鳴り響いた。 あー。。タイミング悪。 まるで給油しなきゃならないと…

いちばん近くて遠いひと24

職場ですこし嫌なことがあり かといって、帰宅をいそぐわけでもなく。 愚痴をこぼしたところで エンパシー欠陥同士では共鳴できっこないし なにより職場の愚痴は職場でこぼして、自宅に持ち帰るべからず、は学習済み。 夜のバイト先になるかもしれないお店で…

いちばん近くて遠いひと23

仕事柄、定時上がりの彼の方が、わたしより1時間ほど早く帰宅する。 帰宅すると彼は洗濯物を取り込み、いまの季節はファンヒーターの前に畳んで置いておく。 それから部屋着に着替えて、夕飯の仕込みをして、アラームをセットして仮眠に入る。 わたしが帰宅…

いちばん近くて遠いひと22

ゆうべ沈黙のなか 彼は変わらずゲームを、わたしは読書を。 基本、彼は昼夜問わず部屋の灯りを最小限にしたい人なのだが 同室で読書をするわたしに気を遣って、か、 本が読めるくらいの明るさで過ごしていた。 夜更け、彼がシャワーに向かった。 シャワーか…

いちばん近くて遠いひと21

わたしは基本、テレビを見ない。 彼がつけた番組をなんとなしに見入ることはあっても自分でつけることは滅多にない。 だから自分がつけた時、それは真剣に番組を見たい時なのだ。 が 彼はテレビをコミュニティのアイテムのひとつ、と捉えているフシがある。 …

いちばん近くて遠いひと20

彼のことを記し始めて20記事目だ。 それでもまだ書き切れないのだから 出会って10余年、共に暮らして3年、 彼を幼い頃から知る叔母や、縁の切れた実母やらを差し置いて、彼に関わった密度でいうなら、 わたしは「彼研究人第一人者」の称号に値するだろ…

いちばん近くて遠いひと19

用事がひとつあり タバコが切れたタイミングで出かけた。 わたしがまだその気になれないため、いっしょにと誘うことはせず、ついでに買ってくるものはないかと問いかける。 無表情ながら平常だよ、をアピールするような声色で ビール以外はとくにないかな、…

いちばん近くて遠いひと18

くしゃみが出るときに へっくしょっ、のあと、遅ればせながら 唾液が飛び散らないよう口をすぼめると ついでに、くしょっ、を重ねてしまう。 これは単なる癖なのだが これをやると、隣で彼が不機嫌になる。 おかしいでしょ、と言うのだ。 へっくしょ、で終わ…

いちばん近くて遠いひと17

ゆうべ 会話もないままに、うつらうつらしていたら いつのまにか眠っていた。 毛布にくるまり丸くなっているところへ 布団がかけられた気配で少しだけ目が覚めた。 彼がかけてくれたのか。そういうことするんだ、このひと。 意外におもいながらふたたび眠り…

いちばん近くて遠いひと16

とても静かだ。 金曜の長すぎる業務を終えて帰宅。 今回の2人に起きた問題が勃発する前は 金曜にふたりで夕飯の買い出しに行き 土曜も日曜も買い出しに行って 日曜の買い出しで次の金曜までの食材の買いこんでいた。 わたしはかつては普通の主婦だったので …

いちばん近くて遠いひと15

昼間の仕事のミスを処理しながら すこし沈む気持ちを振り払うように 事務的な問い合わせを受けて営業先へとむかった。 口頭で事務手続きを説明して挨拶を交わし 踵を返したところで、先方から嬉しい言葉が。 かねてから提案してきたプランが 成約するかもし…

いちばん近くて遠いひと14

昨日今日と 自分の仕事の合間をぬって 2時間ずつ彼の職場に顔を出した。 またいちからやり直して 彼の仕事を覚えてゆくことにしたのだ。 これはこれ、という事で 職場モードのおかげもあり穏やかな時間を過ごす。 が、帰宅してからはわたしの方は他意も何も…

いちばん近くて遠いひと13

学生の頃、姉の本棚から抜いて読んだその本は 海外の著名人の作品だった。 嫌われ者で夫にも愛想をつかされているとあるご婦人が、ひとり旅に出る。 自身に対する周りの評価など彼女は気にしていない。いや、評価点が低いなどとそもそも思っていない。 とこ…

いちばん近くて遠いひと12

たばこを吸い終え 気持ちを固めて車を走らせる。 今頃、家の中はめちゃくちゃになっているかもしれない。 さっきまで整然と棚に収まっていた食器は 割れて床に散乱し、 わたしの部屋のクローゼットの衣類は屋外に投げ出されているかもしれない。 けれどそれ…

いちばん遠くて近いひと11

真夜中。 隣室から長い時間彼が立てる物音。 怖さに耐えかねて ともかくこの場を離れようと決める。 静かにパジャマを脱ぎ いつものデニムとパーカーに着替え お尻のポケットに財布と携帯を差し込む。 タブレットや書類が入った仕事用バッグ、 着替えのスー…

いちばん近くて遠いひと10

半時間ほど前から身を強張らせている。 隣からガチャガチャゴトゴト なにかを手にしては移動させながら 何処かに集める音がする。 いまのわたしには ビールをのんではテーブルに缶を置く、カタッという音すら心臓が高鳴るくらいの打撃になる。 おそらく彼は…